[原子力産業新聞] 2002年5月23日 第2137号 <1面>

[原子力安全委・分科会] 安全審査で指針案

原子力安全委員会・原子力安全基準専門部会の中間貯蔵施設指針検討分科会(東邦夫主査)は21日、11回目となる会合を開いて、使用済み燃料中間貯蔵施設の安全審査指針案を審議し、了承した。現在、事業者が進めている中間貯蔵施設計画を念頭において金属製の乾式キャスクを用いた貯蔵施設を対象に、昨年1月以来重ねてきた検討の結果を安全審査上の基本事項として取りまとめたもの。来月開催予定の専門部会に報告する。

使用済み燃料の発電所外貯蔵に関しては、1999年6月に原子炉等規制法の一部改正によリ、2010年までの貯蔵事業の開始に向けた制度が整ったことを受け、電気事業者が中間貯蔵施設の立地調査を開始したことなどを背景に、初めてとなる安全審査指針の策定が開始された。

今回の指針案は、使用済み燃料を事業所外での運搬に用いられる「輸送容器としての機能を併せ持つ金属製の乾式キャスク」に収納して搬入したうえで、その後も別の貯蔵容器に移し変えずに搬出まで貯蔵するための施設を適用の対象とした。貯蔵期間は40年から60年程度を想定した。

同分科会では、(1)除熱・密封・遮蔽・臨界防止の各機能が備わっており、キャスク本体・蓋部・バスケット等の構造強度部材が設計貯蔵期間を考慮した材料の選定と基本的安全機能が失われないこと(2)基本的安全機能を有する設備・機器の位置づけの必要性(3)施設の機能に応じた耐震重要度分類の必要性(4)安全評価の考え方として、想定すべき異常事象の選定や安全評価基準の策定、立地評価事故の想定の必要性--など課題に挙げ、これまで詳細に検討を進めてきた。

指針案は、大きく「立地条件」「放射線管理」「環境安全」「臨界安全」「その他の安全対策」--に区分され、それぞれに指針として要求事項が記述されている。

合計21に及ぶ各項目の指針を審議する段階で、とくに地震に対する安全対策や検査・修理等に対する考慮といった考え方をめぐり多くの議論が交わされたという。

指針では使用済み燃料の輸送容器を施設での貯蔵設備として用いることを前提にしており、輸送容器自体は関係基準に適合した強固な構造であることを踏まえたうえで、貯蔵建屋や構造物が地震による影響を受けてもキャスクの基本的安全機能を損なわないことなどを求めている。

また、指針案の中では、「適切な方法で検査、試験、保守および修理ができるようになっている」ことを求めているが、キャスクの閉じ込め機能の維持や長期的な安全性を確保する観点から、キャスクの蓋を開けて収納された燃料の直接確認はしないでもよいとする考えを盛り込むなど、特徴的な点が見られる。


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