[原子力産業新聞] 2002年5月30日 第2138号 <3面>

[フィンランド] 新規炉建設へ

フィンランド議会は24日、107対92の票決で新規原子力発電所の建設を原則的に認めるとの判断を下した。これは5か月前に同国政府がティオリスーデン・ボイマ社(TVO)の提出した同国で5基目になる原子炉の建設計面を原則承認したのに続くもの。西欧で新規原子炉の建設が承認されたのは約15年ぶりのことになる。9年前には同国議会は5基目の原子炉建設計画をやはり107対91という今回とほぼ同じ票差で否決した経緯がある。

今回の結果について貿易産業省の報道官は、「昨年採用された国家気候変動防止戦略を支援する形になった」と評価しており、同国はC02排出削減に向けた国際的な公約を果たす準備を整えつつあると指摘。京都議定書の要求を満たせるべ-スロード電源として原子力は中央政府による財政および国家経済という両方の面で最もコスト効率の高いオプション、との認識に基づいた結果だと強調した。また、「政府の気候変動防止戦略に沿った重要な決定というだけに留まらず、再生可能エネルギーへの助成や免税、省エネ対策など、この戦略における基本政策を支援する決定とも言える」と説明している。

今回の票決結果を受けて、建設計画を申請したTVOは、出力が100万〜160万キロワットのPWRもしくはBWRを建設することが原則的に可能になった。建設費については出力や機器・材料、作業などの規模により17億〜25億ユーロと見積もっていることを明らかにしている。建設サイトとしては、オルキルオ卜原子力発電所が立地しているユーラヨキのオルキルオト、ロビーサ発電所があるヘストホルメンの両自治体が受入れ了承の意思表示をしていることから、現在でも両サイトの評価作業を継続中。環境影響評価については、TVOが2000年11月に建設を申請する以前にすでに済んでいるほか、原子力安全当局(STUK)による同計画の予備的な安全評価も2001年2月に完了している。

議会による原則承認の有効期間は5年間で、もしその期間内にTVOが原子力法に基づいて建設許可を申請しなければ今回の承認は失効してしまう。政府の見方ではTVOは今年中にも原子炉の入札手続きを始めようとしているところで、その結果によって原子炉の型や出力などを決定。さらに2か所の候補地の中から建設サイトを選択した後、ようやく建設許可申請書を提出できることになる。

建設認可および、後日申請される操業許可の手続きはともに政府が扱うことになっており、関連法規に基づいて広範囲な諮問および公聴手続きが行われる。順調に作業が進めばTVOは2005年にも建設認可の申請手続きを完了。承認が得られた場合、約4年後の原子炉完成を待って制定法上の操業認可を申請する段取りで、最終的に新規原子炉の運転が開始されるのは2010年頃になると予想されている。

なお、議会は同日、新規原子炉から将来排出されることになる使用済み燃料についても最終処分を許可するとの原則決定を下した。これは昨年、議会が使用済み燃料最終処分場の建設を承認した際、対象とする使用済み燃料を既存原子力発電所からの物に限っていたのに伴う措置。


Copyright (C) 2002 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.