[原子力産業新聞] 2002年6月6日 第2139号 <3面>

[ユーラトム] 原子燃料供給で年次報告

欧州原子力共同体(ユーラトム)の供給局は先月下旬、欧州域内における原子燃料供給に関する2001年の年次報告書を公表し、燃料の供給破綻や不足に備えて今後とも原子燃料サイクルのすべての段階において戦略としてのウラン在庫量を維持するよう原子力発電会社に勧告した。

報告書はまず、昨年は域内電力会社への原子燃料供給が引き続き安定傾向にあったという事実に触れ、近い将来では天然ウランの入手に問題はなく、長期的に見ても世界のウラン埋蔵量は産業界の持続性を保証し得る適切なレベルにあると指摘。原子力による発電量が増加しているにも拘わらず、ここ数年、原子燃料の所要量が増えていないのは燃料技術の改善に負うところが大きく、欧州域内のみならず世界中でも引き続き燃料サイクルの各段階において設備能力が近年の所要量を上回るとの見方を示した。

報告書は次に、必要な供給量の確保を保証していくため、ユーザーに対してさらなる注意を喚起。@近年では供給量の大部分が在庫から出ているため世界の天然ウランの需給バランスは依然として不均衡A業界内の統廃合が進み、供給業者の数が少なくなっている−と指摘した。市場に出せる追加の天然ウランを生産するには長期のリードタイムが必要であり、大手転換業者の1つ(BNFL)が1部のサービスの販売・取り引きを数年後に停止する決定をしたという点からも、一時的な供給破綻に備えて戦略的に適切なレベルの在庫承を維持すること、所要量の大部分は主要な供給業者と契約するとともに、供給源は多様化しておくよう電力会社に勧告している。

報告書はまた、旧ソ連の新独立国家(NIS)からの安い天然ウランが市場に悪影響を及ぼさなくなるにつれ、制限は徐々に消滅、価格差も小さくなったと指摘。一方、濃縮市場においてはロシア産濃縮ウランのEU域内での販売や米国への流入という影響から、当面の間は規制対象となると強調。米ウラン濃縮会社の欧州濃縮企業2社に対するダンピング疑惑が今年も尾を引く切能性を指摘するとともに、2000年末に公表されたECのエネ供給戦略に関するグリーンペーパーが環境影響や経済性など様々な観点からEU域内のエネ供給保障について議論を呼び起こし、原子力も含め各工ネ源の役割についての論議が促進されたことを伝えている。

同報告書はさらに、世界の多くの地域が電力不足に陥っているという事実や化石燃料の価格の変動、温室効果ガス削減の必要性、既存原子炉の良好な操業実績と国民合意の改善などが米国その他の国々において原子力発電に対する認識を新たにしたと指摘。操業停止中だった原子炉で運転再開が決定したり、数年間にわたって凍結されていた原子力開発計画が見直されたり、新たな建設プロジェクトが検討、または実行されつつあると強調している。


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