[原子力産業新聞] 2002年6月6日 第2139号 <3面>

[英・BNIF] 「炭素税負担が4割減」

英国原子力産業会議(BNIF)は5月7日、既存の原子炉を新たな原子炉で取り替えた場合、CO2排出に伴う産業界およびユーザーの経済的負担は激減するとの調査結果を公表した。

この調査は独立の民間調査機関であるケンブリッジ・エコノメトリクス社がBNIFの委託により実施したもの。報告書はまず、ほどなく寿命を迎える英国内の原子力発電所を原子炉で取り替えずに「2010年までにCO2の排出貴を20%削減」という政府目標を達成するとしたら、英国の産業界および電力消費者はCO21トンあたり55ポンド(1万615円)を負担しなければならないと指摘。既存の原子力設備だけでも原子炉で取り替えることができればこの負担額は33ポンド(6369円)まで削減できるとの見方を示した。また、内閣の実績・技術革新局(PIU)が英国のエネルギー政策の再評価で今年2月に提案した方法−再生可能エネの開発促進と省エネなどではCO2の排出削減目標を十分達成できるとは言い難いと付け加えている。BNIFのA.ヘイム事務局長も、「英国政府が原子力政策を早急に見直す必要があるのは明白で、CO2排出削減目標を満たすための必要経費は原子力の将来見通しを改めさせることになるだろう」とコメントした。

このような予測は「英国経済における複数セクターのダイナミック・モデル(MDM−E3)」を使ったデータ分析に基づいて出されており、49種類の産業、13の燃料ユーザー、11種の燃料、100か所以上の発電所データを活用。英国産業界の環境政策や一般的な経済状況を斟酌した最も詳細で最新の分析結果と言われている。2010年までの経済成長、エネルギー需要およびそれに伴う環境へのCO2排出量は次のような5種類のシナリオで試算したとしている。

第2シナリオ PIUが勧告した再製可能エネの開発促進方策が前提。風力発電などの拡大により再生能エネの設備は全体の10%に達し、CO2排出量は90年レベルの13%減となるほか、電力需要は基本シナリオから3%少なくなる見通しだ。

第3シナリオ2020年までにCO2排出量を90年レベルから20%カットという政府目標が達成されたという前提で試弾。2003年に再入されるCO21トンあたりの炭素税は27ポンドだが、2010年には55ポンドまで増加する。燃料価格の上昇を引き起こし、石炭では特に、基本シナリオの80%の膨張が予想される。これほど高額な炭素税があれば新規原子炉の建設を経済計画に提案することが可能。

第4シナリオ 第3シナリオを前提条件とする一方、雇用主の国家共同保険制度を通じて産業界の税負担が軽減されるよう税収をリサイクルする。

第5シナリオ 第4シナリオを前提に、廃止措置になった既存炉の不足容鼠を新規原子炉で取り替えた場合の効果を検証。結果的に、2004年からトンあたりの炭素税は33ポンドに抑えられると予想できる。


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