[原子力産業新聞] 2002年6月20日 第2141号 <2面>

[核燃料サイクル機構] 人形峠ウラン残土問題をめぐる動き

岡山県と鳥取県の県境にある人形峠鉱山や鳥取県の東郷鉱山などでは、核燃料サイクル開発機構(当時動燃事業団)が1960年代からウラン鉱石の探鉱事業を行ってきた。1987年にはすでに、こうした鉱山開発は完全に終了。現在、鉱山周辺には、ワラン鉱を掘り進んだときに出された残土の堆積場が22か所ある。

同機構はこうした鉱山関連の適切な跡措置に関する取り組みを実施している。外部専門家らによる鉱山跡措置技術委員会(委員長・中野政詩東京大学名誉教授)を設置。4月には、跡措置の基本的考えとならんで安全な措置に向けた実証試験計画を内容とする基本計画がまとめられている。

実証試験計画は、ウラン残土の恒久的な保管対策を確立するために、同機構人形峠環境技術センターの施設でウラン残土を用いてウランやラドンの遮蔽技術の確認などを行うもの。そのために、同横構では鳥取県東郷町方面(かたも)地区に一時保管されている残土を試験用に岡山県側の同センター内に搬入することを計画。5月27日には、同技術委委輿長らか岡山県に対して計画を説明、理解を求めたが、岡山県では鳥取県内の方面地区から残土を持ち込むことは認められないとの姿勢を崩さず、膠着状態が続いている。

一方でこの背景には複雑な事情がある。方面地区のウラン残土をめぐってサイクル機構と地元住民が係争中である点だ。ウラン残土は採掘口の近くに保管されるのが通常だが、同地区の住民自治会が2000年11月に鳥取地裁に対して、サイクル機構が早急にウラン残土を撤去するよう、90年に同機構(当時動燃)と締結した協定の履行を求め提訴した。これまでに10回の口頭弁論が行われた。

協定には、同地区の2つのウラン鉱帯からの残土約3000立方メートルを全量、関係自治体の協力を得て、1日も早く撤去することが定められている。訴訟の最大の争点は、ウラン残土の撤去は「関係自治体の協力を得て」行われる点をめぐっての解釈。これまで、サイクル機構は方面からの残土を受入れる自治体を周辺地域で探してきたが、難航しているため方面に借置きされている。

方面地区の残土は保管状態がよく、跡措置対策に基づき技術センター内での実証試験用に利用することが適していることもあり、サイクル機構は繰り返し岡山県に搬入許可を要請したが事態は進展していない。

こうした中で、方面地区からの残土撤去訴訟は25日、鳥取地裁で判決が下る。


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