[原子力産業新聞] 2002年6月20日 第2141号 <3面>

[米DOE] 人材育成で助成金制度創設

米国エネルギー省(DOE)のS.エイブラハム長官は10日、米国の原子力科学・エンジニアリング分野における基盤強化および人材育成を目的とした、大学教育プログラムに対する新たな助成金交付制度を公表した。

「原子力インフラおよび教育のための新制度(INIE)」と名付けられたこのプログラムは、DOEの独立の諮問機関である原子力研究諮問委員会(NERAC)の勧告に基づいて創設されたもの。過去10年の間、米国の大学では財政難などのため研究炉施設の維持や原子力工学プログラムの存続が難しい状況に陥っており、NERACとしては、このままでは国内の原子力科学技術分野で高まりつつある専門技術者の需要に十分対応できなくなるかもしれないという危惧を表明していた。すでにINIEからの初回助成金として4つの大学共同体に対して550万ドルの交付が決まっており、米国の国立研究所や産業界とも戦略的な協力関係を築きつつ研究炉や原子力工学プログラムのための新たな投資が促されることになる。

助成対象については、独立の立場の専門家で構成される相互審査小委員会が全米中の大学および共同体から提出された13の研究提案について評価。その結果に基づいてDOEが4共同体を選択したとしている。追加予算が利用可能になれば今年はさらに3つの大学共同体を助成対象とする予定で、これらの共同体に属する合計14の大学が研究炉の運転や原子力工学プログラムのためにINIEから助成を受けることになる。初年の交付額は各共同体ごとに100万から200万ドル程度だが、将来的には5年単位での交付を検討しているという。

同長官はまた、この分野の優秀な学生が十分な研究活動を実施できるよう、73の奨学金・特別研究員給付金、および31の大学に対して新たに65の原子力エンジニアリング助成金を交付するとの考えを示した。全米を地域分けした上で各地に研究炉センターを履き、助成金の投入を強化すると説明。「我々が将来のエネルギーや環境、医療問題に対処していくとしたら、次世代の原子力エンジニアや科学者を育成するためにこれらの新制度が絶対的に必要だ」と強調している。

これらのほか、DOEは関連分野で年単位で支給する3種類の補助金制度について公表。@大学の原子力工学部における新たな機器購入や研究活動支援のため11の締助金A大学の研究炉における安全保障の改善、計装制御系の強化など23の原子炉改造助成金B原子力施設を持たない大学で原子炉訓練や試験の機会が得られるよう22の原子炉共同使用補助金−を交付するとしている。


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