[原子力産業新聞] 2002年 7月 4日 第2143号 <3面>

[米NEI] 旅客機激突でも「原子炉の安全は確保」

米原子力エネルギー協会(NEI)は6月20日、原子力発電所が商用旅客機に激突された場合でも原子炉の格納施設が破壊される可能性は低いとの予備的な調査結果を明らかにした。

この研究調査はNEIの委託により電力研究所(EPRI)が実施したもの。原子力産業界の中でも構造分析を専門とする4企業が担当したとしており、同産業界の特別作業グループが調査結果を審査した後、最終報告書をまとめる計画。機微な情報が含まれるため報告書の詳細が一般に公開されることはないが、米国原子力規制委員会(NEC)に対しては説明を行う予定だとしている。

同調査ではあらゆる種類の格納構造物について調べたわけではないが、原子力発電所で最も典型的なタイプの格納施設を使用。昨年9月の同時多発テ□に使われたのと同じボーイング767型機のほかに、757型機や777型機など近年、主流となっている航空機についても衝撃評価を行った。その結果、原子力発電所が旅客機を利用した自爆テ□の標的になったとしても機体やエンジンが格納施設を突き破ることは考えにくく、NEIとしては発電所の安全性は確保できるとの確信を深めたと強調している。

調査ではまた、機体が格納施設目がけて飛行する角度を想定。この場合、格納容器の天井が受ける打撃は斜めに逸れる上、熟練したパイロットでも格納容器上部に直撃する角度で旅客機を操縦するのは事実上無理との評価結果から、NEIは「パイロットが大型旅客機を格納容器に突っ込める角度で正確に操縦することはできない」と結論付けている。

同調査はさらに、使用済み燃料の貯蔵所についてもボーイング767型機が激突した時の影響を分析。「壁が原子力発電所の格納容器壁より厚いので十分防護できる」との評価結果を示した。この場合、貯蔵所壁の厚さ1.2〜1.5メートルのコンクリート部分は甚大な被害を受けるものの、使用済み燃料を防護しているステンレス鋼の内張りは無傷で残るとしており、貯蔵プールの冷却用水が流出することはないと説明している。

このほか、同調査では原子力発電所の補助建屋に関しても旅客機が激突した際の被害程度を評価した。これらの建屋は通常、厚さ約0.5メートルの鉄筋コンクリート壁で建造されており、旅客機が外壁を貫通した場合でも、内部の発電所システムが被害を受けるか否かは建屋それぞれの立地場所や内部構造に因ると指摘。いずれにせよ、発電所ではほかの場所に複数の安全機器が種々設置されているので原子炉を安全に閉鎖することは可能との判断結果を示している。


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