[原子力産業新聞] 2002年 7月 11日 第2144号 <4面>

[日本国際フォーラム] 安全保障と環境保全でシンポ

日本国際フォーラム(今井敬会長)は8日、東京・千代田区の経団連ホールで緊急国際会議「エネルギー安全保障と環境保全−原子力の役割」(=写真)を開催。エネルギー安全保障や地球環境問題など国際政治や戦略的な観点から原子力推進の必要性を訴える議論が繰り広げられた。

午前のセッションでは、同会議企画実行委員長の村田良吉・元駐米大使の開会挨拶に続き、中曾根康弘・元総理大臣が来賓挨拶。同氏は当時関わった原子力基本法成立や最初の原子力関係予算など我が国における原子力開発の草創期の様子を詳しく紹介しながら、現在の原子力を取り巻く状況に触れ、京都議定書の数値目標達成には原子力発電所新増設の促進やプルトニウム有効活用の観点からプルサーマル計画が遂行されなければならないと強調した。

続いて基調講演の中で、尾身幸次科学技術政策担当大臣は、温暖化防止は先進国のみならず発展途上国も含め全世界が参画して取り組むべき大きな課題とし、原子力によるエネルギー供給声璃加させることが「日本としての王道」と強調。そのための国民的理解を得ることが不可欠との考えを示した。

H.べーカー駐日米国大使は、ブッシュ政権下でのエネルギー・環境・原子力政策を包括的に講演。昨年の同時テロで関心が高まった原子力施設に対する安全保障をはじめ、経済的競争力や廃棄物処分といった原子力発電が直面する課題を指摘するとともに、環境問題やエネルギー供給面において原子力が果たすべき貢献に対し大きな期待感を表した。さらに欧州を代表してT.ウィン欧州議会予算委員長はEUという大きな枠組みの中でも原子力をとりまく状況は各国様々な点を最近の事例を挙げ、底流として見られる原子力発電への回帰を説明。またD.シアゾン駐日フィリピン大使はアジア地域の視点からエネルギー安全保障と原子力開発の関係を述べ、「ASIATOM構想」などユーラトムを参考にした東アジア地域内での透明性の高い原子力開発を保障する体制構築が、アジアにおける原子力の新たな発展の方向性をもたらすとの考えを示した

午後はパネル討論として、エネルギー安全保障と環境保全という重要な命題を解決するための課題が提起され、その中で原子力が果たし得る役割に焦点をあてた様々な意見が交わされた。


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