[原子力産業新聞] 2002年7月18日 第2145号 <1面>

[文部科学省] 二法人統合準備会議、基本報告案まとめる

文部科学省は7月16日、都内のホテルで第8回原子力二法人統合準備会議 (座長・青山丘文部科学副大臣) を開き、日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構を統合する新法人設立への考え方をまとめた「基本報告案」を検討した。会合には、青山副大臣、加納時男政務官のほか、9名の委員が出席した。

今回出された基本報告案は、エネルギー・セキュリティと地球環境保全の観点から、エネルギー源としての原子力の重要性を強調、原子力の研究・開発に対して二法人は大きな貢献をしてきたものの、「特殊法人による活動が結果として、事業の肥大化や非効率化、目的達成の遅延による費用の増大、路線の硬直化等のいわば負の側面をもたらした面があり、国民の批判を惹起してきた」と総括、また、「もんじゅ」や東海再処理施設での火災爆発事故をはじめとする事故が、国民の信頼感を損なったと総括している。

同報告は新法人設立の意義を「簡素・効率的・透明な政府を実現する行政構造改革の一環」と位置づけ、原子力に対する国民の信頼を回復し、原子力研究開発を再活性化する重要な機会と述べている。

新法人の意義や役割について、委員からは、「整理・合理化が新法人設立の主目的との印象を受けるが、統合の積極的な意味を踏み込んで書いてほしい」、「原子力のエネルギー利用だけでなく、放射線利用の位置づけもしっかり書き込んでほしい」、「新法人設立への意気込みが重要であり、国民に訴える力が必要」、「報告案では国の役割が曖昧になっていて、新法人に責任がかかっている。国が表に出てほしい」などの意見が出された。

新法人設立後の体制については、現在二法人が所有する12事業所・研究所をそのまま引き継ぐのではなく、法人の目的をはっきりさせ、そこから必要な体制を考えてほしいといった意見が出された。また、核融合研究開発計画については、夢のある長期的な研究開発目標であり、新法人で力を入れていくべきとの意見があった一方、核融合研究は、現時点では学術研究であり、エネルギー関連予算を使って行うべきではないとの意見も出された。

新法人の経営基盤を揺るがしかねない二法人の累積欠損金の処置について、前回会合での意見にもとづき、報告案は「すべて減資されることが最も望ましい」と踏み込んだ表現になったが、新法人の重荷が取れたと評価する声や、欠損金は会計諸原則により処理すると明記すべきとの意見が出された。

また、新法人にとって重荷になりうる、二法人の原子力施設のデコミと放射性廃棄物の処理処分については、新法人の運営費からこれらのコストを出すことは不可能であり、仕組みを考えておかないと運営が行き詰まるとの意見や、国の活動から発生した負債は、国の責任で処理してほしいとの意見が出され、新法人が円滑に活動を行うため、過去の負の遺産を、設立前に清算するメカニズムを作ることが重要との意見があった。

これに対し文科省からは、デコミや処分に必要な資金を中期計画に示し、積立方式等での確保を検討し、コストもクリアランス・レベルをふまえて考えると説明があった。

最終回となる次回の会合は、8月5日に開催される。


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