[原子力産業新聞] 2002年7月18日 第2145号 <2面>

[原子力安全委員会] 安全目標めぐりパネル討論

原子力安全委員会の安全目標専門部会 (近藤駿介部会長) は7月13日、「リスクと、どうつきあうか--原子力安全委員会は語りあいたい」と題するパネル討論会を東京で開催し、約200名が参加した。

現在、同専門部会では、「原子力は、どのくらい安全なら十分なのか」という問いに答え、合理的なリスク管理を行うため、定量的および定性的安全目標の策定に向け検討を行っている。

この日のパネル討論会では、近藤部会長の挨拶のあと、「私たちの社会は、リスクとどうつきあうか」と題して、木下冨雄・甲子園大学学長が講演。同氏は社会心理学者としての立場から、客観的なリスクと主観的なリスクとの間には大きなギャップがあるとし、合意形成のためには国民が正しい知識を持つ必要があるが、そのために政府や企業がフェアで十分な情報提供を行う必要があり、リスク・コミュニケーションはその有力な手段であり、合意形成のキーワードは信頼性だと強調した。

次に、「原子力はどれくらい安全なら十分なのか」と題したパネルが開かれ、このなかで小林・南山大学教授は、対話を効果的にするためには、目的を明示し、正当性を確保することが必要であり、このプロセスの方法や時期、参加者の適切性などが重要だと述べた。同氏は、日本ではこうした社会実験を怠ってきたため、原子力のPAが全く意味をなくしていると指摘した。

このあと会場との質疑応答が行われ、マスコミによる原子力事故等へのセンセーショナルな報道への疑問が寄せられたことに対して、パネリストより、マスメディアとは敵対したり抱き込んだりするのではなく、対話が必要なこと、関係者のごまかしや保身が事を大きくすることなどの指摘があった。

安全委は、秋にも東京以外の地域で安全目標の公開パネル討論会を開催する予定。


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