[原子力産業新聞] 2002年7月18日 第2145号 <4面>

[レポート] 世界原子力駅伝大会開く

今年5月15日から17日の3日間にわたり、スウェーデンで開催された第7回世界原子力駅伝大会に日本選手団8名の一員として参加した。大会には主催国であるスウェーデンをはじめ、フランスやドイツ、ロシアなど世界13か国から約400名の原子力産業人ランナーの参加があり、アジアからは日本が参加した。

参加したランナーは、バトンを走りつないで道行く市民に原子力発電の有効性のアピールをするとともに、スウェーデンの産業大臣宛に同国でとられている原子力離脱政策の転換を訴える請願書を手渡した。文字通り汗を流して世界の原子力施設の第一線で働く産業人からのメッセージを発信しようという企画である。

【300キロメートルを昼夜走行】

原子力エネルギーに対する理解向上と原子力開発促進のアピールを目的に、国際的なNGOである原子力従事者世界会議 (WONUC) が中心となり、1996年から毎年開催されているスポーツ・イベントである。300キロメートル程度の長距離をチーム全員が一丸となり、バトンリレーをしながら昼夜連続して走り続ける駅伝形式のマラソンであり、このスタイルの駅伝を考案したフランスの再処理施設従事者により「マキシマラソン」 (Maximarathon) と命名されている。

【地球環境への原子力の貢献をアピール】

スウェーデンでは、1979年米国スリーマイル島原子力発電所で発生した事故を契機に国民投票により原子力離脱政策が選択され、脱原子力の動きが具体化しつつあるなかで、最近の世論調査では、国民の78%が原子力発電の地球環境への有効性を支持するという結果も得られはじめている。原子力発電が地球環境問題の解決策として有効であり、その実現に原子力産業に従事する私たちが責任を持ってあたることをスウェーデン国民にアピールするため、世界中の原子力従事者ランナーが応援に駆けつけた。

日本からは「マキシマラソン・ジャパン・ネットワーク」が日本の原子力産業に従事するランナーの有志を募り、日本選手団を結成して参加した。スウェーデン国民の原子力エネルギーの理解向上に貢献することがテーマ。

【世界の原子力産業人が手を携え】

バーセベック原子力発電所にほど近いスウェーデン第三の都市マルメ市をスタート地点とし、リングハルス発電所を経由して同国第二の都市イエーテボリ市までの292キロメートルを約24時間かけて駅伝リレーでバトンを走りつないだ。日本チームはウクライナチームおよびスペインチームとともに26名からなる合同チームを編成し、全34区間の駅伝区間のうちの5区間を受け持ち、平均時速12キロメートルのスピードで走り、1人あたりの総走行距離は50キロメートルを越えるという過酷なものであった。

春とはいえ肌を刺す小雨のなか、雨上がりの暖かな日差しのもので緑の草原と黄一色に染められた菜の花畑の一本道。煉瓦の壁と三角屋根の瀟洒な家が整然と立ち並ぶ町並みのなかを、また夜は漆黒の闇夜のなかを猛烈な浜風にあおられながら、そして前方に かすかに揺らぐ先導車のテールランプをたよりに、私たちは世界の原子力従事者ランナーとともに手を携え、ドロップアウトしそうなランナーを励まし、飛び出すランナーにはチームワークを求め、エールを交換しながら北欧の大地を駈け抜けた。

【ゴールで産業大臣に請願書】

世界中の原子力産業人ランナーが走りつないだバトンには「Nuclear Power-a Part of the solution!」と名付けられた請願書が込められていた。ゴールで産業大臣に手渡された請願書には地球環境保護のためには原子力が必要であり、離脱政策の転換を図るべきと訴えられていた。

日本からは「地球と子どもたちの未来のために」と題し、「私たち原子力産業人は、原子力エネルギーの真価を発揮するためプロフェッショナルとして最大限の努力傾注し、直面する課題の克服に向けてチャレンジしていこう」と世界の原子力産業人に呼びかけたメッセージを託した。そしてこのメッセージの体現及びその後のパーティでの表彰のお礼として、日本チームは再処理施設建設の進む青森県のお祭りである「ねぶた」囃子の笛に合わせ、メンバー全員がハチマキ姿の「ハネト」となって踊りのアトラクションを披露した。パーティ会場からは盛大な拍手を頂戴し、共通語となった「バンザー!」で締めくくることができた。

【来年はフランスで開催】

日本のエネルギー環境及び産業構造と類似点の多いスウェーデンで、同じく原子力産業に携わる仲間として彼らが自分たちの意志で自国のエネルギー問題の解決に向けて取り組んでいる姿に感銘を受けた。来年はフランスのベルサイユ宮殿からラ・アーグの再処理工場を結んで世界原子力駅伝大会が開催される予定である。私たちのメッセージがより広く伝わるようこれからも走り続けて行きたいと考えている。

(東京電力柏崎刈羽原子力発電所広報部 (地域担当) 新潟連絡室副部長・菊池宏)


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