[原子力産業新聞] 2002年7月25日 第2146号 <2面>

[外務省] 地球温暖化で公開シンポ

外務省と地球環境戦略研究機関は19日、東京港区の三田共用会議所で、「気候変動に関する更なる行動」と題した公開シンポジウムを開催、内外から約200名が参加した。

シンポジウムではまず川口順子外務大臣が基調講演を行い、地球温暖化は人類の生存に関わる深刻な問題であり、早急に取組みを強化しなければならないとしたあと、わが国が今年6月に締結した京都議定書が発効すれば、市場メカニズムを活用した費用効果的な排出削減の仕組みが確立されるとして、各国に締結を働きかけると述べた。

同大臣は今日と議定書が温室効果ガス濃度の安定化へ向けた努力の始まりでしかなく、特に、2010年頃に先進国を上回ると予測される途上国の排出量については、途上国側の強い反対により京都議定書に盛り込めなかっただけでなく、その後も実質的議論ができない状況が続いていると指摘した。その上で、途上国を呼び込むため、ODA等を通じた途上国の取組み能力向上への支援、クリーン開発メカニズム (CDM) を通じた排出削減と技術の獲得等が、途上国による将来の削減への素地を整えるのに重要であり、政府としても今後も努力していくと述べた。

将来の削減約束について川口外相は、50年、100年といった長期的な安定化を目指した、すべての国が参加する削減ルールが必要だとし、基本的考え方としては、各国間の衡平性の確保、経済状態・能力の考慮、これまでの努力の成果など、各国の事情を考慮した差異のある扱いと、長期目標による柔軟性が重要と述べた。また、単一基準での合意が難しい場合、複数の基準を選択的に適用する可能性も提案した。

次に講演に立ったパチャウリ・気候変動に関する政府間パネル (IPCC) 議長 (タタ・エネルギー研究所所長) は、まず同パネルについて説明、世界気象機関 (WMO) と国連環境計画 (UNEP) によって、人類が引き起こす気候変動の可能性に関する科学的・社会経済的な情報を評価するために1988年に設立された機関だとし、気候変動がそれぞれの地域での生活に与える影響の評価に力を入れていると述べた。

同議長は、人類の活動による産業革命以降の急激な二酸化炭素放出量の増加が引き起こす全地球的、地域的、経済的、環境的な影響を見極めるために、放出量、気温上昇、抑制にかかるコストについて、様々なシナリオを検討しているとしたものの、どの位のレルの二酸化炭素放出を適切とするかは、結局、社会が決めるべきことだと述べた。

シンポジウムではこのあと、ハンター国連気候変動枠組条約事務局長の講演や、中国、ブラジル、韓国、米国、ドイツ、日本の関係者によるパネル等が開かれた。


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