[原子力産業新聞] 2002年8月1日 第2147号 <3面>

[EC] 対途上国エネ協力で提言

欧州委員会(EC)は7月17日、南アフリカ共和国のヨハネスバーグで26日から開かれる「持続可能な開発に関する世界サミット」に先立ち、途上国へのエネルギー協力を活性化すべきだとの提案文書をまとめ、原子力オプションを選択した国々に対しては高い安全性の確保に必要な技術支援を行うとの方針を明らかにした。

このサミットで欧州連合(EU)はエネルギーに関するEUイニシアチブを公表することになっており、ECが今回まとめた勧告の中核部分になっている。ECでエネルギー・輸送問題を担当しているL.デパラシオEU副委員長は、「エネルギーはEUの開発協力に早急に取り入れるべき問題であり、持続可能な開発においては(1)安定供給面の経済性(2)貧困と戦う社会的側面(3)環境に関する側面、など3つの点で中心的な役割を果たしている」と指摘。P.ニールソン開発・人道的支援担当委員も、アフリカでのエネルギー消費というと大方は手で集めた薪を長い道のりをかけて運ぶというもので、これらは森林の破壊や砂漠化、貧困につながるとの認識を示したほか、「もしも低コストな代替方法が開発されなければ、エネルギー問題は、アフリカでの持続可能な開発および経済成長を阻む大きな要因になる」との考えを付け加えた。

ECが提案した対途上国協力の枠組みは、受益国・地域の人々が優先的な協力項目を選択できるという原則に基づいており、一般的な側面での主要なポイントは次の通り。

▽エネルギー部門の改革=特にエネルギーの生産と配分、価格決定などを民間セクターに開放する。

▽技術移転=主にエネルギー効率の改善や再生可能エネルギー源に関する技術について。

ECはまた、需要サイドの潜在的な協力項目を特に重要視しており、エネルギー効率の改善についてはEUは多くの経験を積み重ねている一方、途上国においては未だに未開発の分野である点を強調している。

一方、供給サイドの協力については、エネルギー源の多様化が重要だとの認識を表明している。まず、クリーンな石炭火力技術の開発と導入を勧告。このほか太陽熱や風力、小規模の水力といった再生可能エネは農村部など小さな地区で利用するには大きな役割を果たすとしながらも、コストが高いなどの難点を指摘した。原子力発電に関しては、途上国の多くが技術や安全面で必要な条件すべてを満たしていないという事実を考慮。それでも原子力オプションを選択した国々に対しては可能な限り高いレベルの安全性が保証されるよう技術支援を惜しまないとの立場を示している。

なお、EUのエネルギー・イニシアチブの狙いは途上国における貧困と戦い、持続可能なエネルギー部門を構築することであり、自発的な性質を持つもの。途上国の政府とエネルギー開発担当機関との連携を促進する一方、ECの担当部門および加盟国との連携も活性化していくとしている。また、民間企業や関係する金融機関および非政府組織などの参加も促す方針だ。


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