[原子力産業新聞] 2002年8月29日 第2150号 <2面>

[米NRC] 「施設の保安強化を」とニ核燃料加工工場に命令

昨年米国で同時多発テロが起きた9月11日が近づくにつれて、原子力施設のセキュリティをめぐる動きが急になっている。米原子力規制委員会(NRC)は、今月22日、BWXテクノロジーズ社とニュークリアフエル・サービシズ(NFS)社に対し、両社が所有する核燃料加工工場のセキュリティを直ちに強化するよう命じた。

テネシー州アーウィンにあるNFS社は、エネルギー省(DOE)のプログラムの元で、核兵器用高濃縮ウランを低濃縮ウランに転換し、原子力発電所用核燃料を製造している。バージニア州リンチバーグにあるBWX社は、研究炉用燃料の製造を行っている。

NRCは、今回の命令について詳細は言えないとしつつも、パトロールの強化、警備体制とその能力の強化、警備所の増設、物理的バリアの増設、より遠い位置からの車両チェック、警察や軍との連絡・調整の強化、サイト立ち入り制限の強化などを求めている。両社は、要求を満たすための計画を、20日以内にNRCに提出しなければならない。NRCは6月18日にも、ケンタッキー州とオハイオ州でガス拡散法濃縮工場を運転する米濃縮公社(USEC)に対し、セキュリティ強化命令を出している。

NRCのメザーブ委員長は、7月中旬のインタビューの中で、原子力発電所のセキュリティが、しばしば空港でのそれと比較されることに関して、「原子力発電所の警備員は、給料も良く、安定した仕事で、高度に訓練されている」として、「空港での警備体制には多くの問題が指摘されているが、同じような問題は原子力発電所にはない」と述べ、特に9月11日以降は、セキュリティが大幅に強化されていることを強調した。その上で、「原子力発電所は、他のどのような民間施設よりもはるかに、自らを守る能力を持っている」と述べている。

NRCが新セキュリティ警告システム

NRCは今月22日、原子力施設に対するテロ攻撃の危険度を色で表す、新しいセキュリティ警告システム(HSAS)を開発したと発表した。これは、国土防衛に関する大統領例に基づくもの。

このシステムでは、原子力施設の現在のセキュリティ状況が、「緑」(テロ攻撃のリスクは低い)、「青」、「黄色」(テロ攻撃のリスクはかなり高い)、「オレンジ」、「赤」(テロ攻撃の可能性が非常に高い)の5段階で表される。現在の状況は「黄色」。


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