[原子力産業新聞] 2002年8月29日 第2150号 <3面>

[南アフリカ] PBMRで可能性調査

南アフリカでペブルベッド式モジュール型炉(PBMR)を開発しているPBMR社は7月30日、同炉の国際市場における可能性について実施した調査で「競合するガス炉開発より五年先んじているが、世界レベルでの商業的な成功はこのリードを維持できるか否かにかかっている」との審査結果が出ていたことを明らかにした。

具体的な数値や情報は企業秘密として公開されていないが、調査チームは現在進められているPBMR実証炉の設計やプログラミング、コスト、許認可や建設などの作業は今後、遅延無く速やかに完了させる必要があると指摘した。PBMR社としては、今後18年間に200以上のPBMRモジュールの注文が確保できると予想している点を強調。今年初頭でPBMR開発企業連合からの離脱を表明した米国のエクセロン社も、PBMR技術の利点は承知しているとして潜在的な顧客となる可能性を表明しており、仕様通りの性能が実現できるなら今後10年間に40基購入する意志がある」ことを明らかにしている。また、開発企業連合の中核となっている南ア電力公社(ESKOM)もPBMR社に対し、「実証炉のほかにさらに十基購入する」との意志表明書を手渡したとされている。

調査チームは特に、地球温暖化問題は各国政府や電力会社にとってもはや避けて通れぬ問題だと指摘。このような背景からも、PBMR技術が南アに大きな経済的、社会的、政治的な恩恵をもたらす国際的な事業ベンチャーの基盤となるとともに、商業的に成功する可能性は大いにある」との見方を示した。

調査報告書はまた、「PBMR計画には十分な価値があるため、初号機を南アに建設するリスクを相殺して余りある」との見解を提示。経済性のカギはPBMRの商業化および国際市場における販売にあり、うまく行けば年間に数千規模の雇用確保と数10億ランドの国内総生産達成も夢ではないとの見通しを明らかにしている。

今回の実行可能性調査に対しては、南ア政府が指名した審査チームが詳細な評価作業を実施。作業は今年初頭に完了していたが、結果は公表されたなかったばかりか、政府も正式な返答書を出していなかった。しかし、プロジェクトを進めている国際企業連合は同プロジェクトを推進していく妥当性を再確認。同調査も、こと南アに関しては「水力や火力資源の限界、すでに原子力発電プログラムが存在するという事実からも、生涯コストで十分競争力を持つよう開発・操業されたとするなら、追加で必要とされる電力の供給、ベースロード電源としては特に、最も可能性の高い候補電源」との認識を示した。

 南アはまた、昨年3月末に欧州の原子力産業界や政府関係者から原子力、とりわけPBMRについての見解を聴取するために鉱物エネルギー相を団長とする実態調査団を同地域に派遣。今回の調査報告書はこの調査団が収集した情報についても次のような概要を明らかにしている。すなわち、(1)環境保護派の反対意見を別にすれば、一般的に原子力の将来は地球規模で有望と考えられており、PBMRのような革新的技術がこうした将来において役割を果たす機会も存在する(2)規制緩和された電力市場で競争力を持ち得るエネルギー源として小型で資本費の安い原子炉が求められている(3)風力や太陽熱などの 再生可能エネはそれなりの役割を果たすものの、世界のエネルギー供給に占めるであろう割合は五%までと考えられ、いずれにしても補完的な供給源が必要となる‐‐など。

また、考えうる競争相手について同調査団は、「フランスなどで大型炉に照準を合わせた開発を実施しているが、複数のケースで小型炉の必要性が強調されていた」と指摘。フランス炉の開発目標がPBMRより後の2010年から1015年とはいえ、PBMRとの対抗を意識していることは明白、との見解を示している。

このほか今回の調査報告書は、PBMRの商業化では1サイトに5つのモジュールを設置する設計形態が計画されていることを説明。想定した設計や機器製造および建設に関する「学習曲線」どおりに資本費が削減できれば、キロワット時あたり2.6〜3.4米セントで発電可能だとしている。

また、市場分析したところ、新規発電設備の需要の3.3%にあたる235セットの5モジュール・パック(合計モジュール数は1175)まで世界市場で販売可能という結果が出たと指摘。こうした有望な見通しにも拘わらず、PBMR社が事業計画に採用した基本ケースの販売シナリオでは25年の評価期間に258モジュールまでしか販売できないという保守的な予想を設定していたことを明らかにしている。


Copyright (C) 2002 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.