[原子力産業新聞] 2002年8月29日 第2150号 <4面>

[原研] 核種一括除染するカプセル開発

日本原子力研究所は、公募型研究である黎明研究制度で、2001年度に東北大学(阿部博之総長)に委託した研究により、3種類の金属吸着剤を包み込んだマイクロカプセルを創製し、多くの放射性核種のイオンを一括吸着除去させることに成功した。

放射性廃液から有害な放射性核種を一括して除去できれば、放射性廃棄物の容量の縮小化と被ばくの低減化に大きく貢献することから、多くの放射性核種を効率的に吸着除去できる吸着剤の開発が望まれていた。これまでは、アルギン酸ナトリウムを塩化カルシウム水溶液に射出滴下して作ったミクロンサイズの球状高分子に一種類の金属吸着剤を包み込ませたカプセルを用いて、選択的に一つの核種を分離する研究が行われてきた。

東北大学多元物質科学研究所の研究グループは、黎明研究課題として研究をすすめてきた。その結果、今回、球状高分子内に高速脱泡混練装置を用いて金属吸着剤を均一に分散させることにより、ゼオライトなど3種類の金属吸着剤を包み込ませたマイクロカプセルを創製することができた。これによりセシウム、ユーロピウム、アメリシウム等の放射性核種の多くが一括して吸着除去可能となった(=上図)。

微小なカプセル状であることから反応表面積が大きく、従って吸着効率が良い。カプセルの形状や金属吸着剤の種類、量を自在に調整できるため、多種の放射性元素を含む廃液処理の効率化とコストの低減に大きく貢献する。また、アルギン酸ナトリウムはコンブの主成分で安価に入手可能であるとしている。

さらにこのカプセルは、環境汚染物質の除去にも有効であると考えられている。


Copyright (C) 2002 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.