[原子力産業新聞] 2002年9月5日 第2151号 <3面>

[米DOE] 原子力の促進訴える

エネルギー関係の国際協力強化のため、先月、英仏露の3か国を公式訪問した米国エネルギー省(DOE)のS・エイブラハム長官が、地球温暖化防止における原子力発電の利点や米国が進めている新規原子炉開発プログラムについて改めて強調する講演を行っていたことが明らかになった。

同長官のスピーチは世界原子力協会(WNA)がロンドンで開いた昼食会の席で披露されたもの。まず始めにブッシュ政権が打ち出したエネルギー政策について触れ、21世紀の米国経済のため、石油や天然ガス、石炭などの火力、水力などの再生可能エネ、原子力といった多様化した燃料ミックスの実現を柱としている点を強調した。この中でも原子力こそ世界の燃料ミックスに加えるべきだという認識が米国では今や常識になっていると言明し、DOEでは原子力について産業界や開発の歴史、近年の進捗状況、進行中の研究開発、今後の見通しまであらゆる側面を調査。その結果、原子力の推進は当然の帰結という否定しがたい結論に達したと訴えた。

同長官によると、近年のエネルギー政策にはクリーンな環境の保全や入手可能な価格で十分な量を供給できること、そして地球温暖化に対する影響などと言った配慮が必要。米国東部の原子力発電所によって数多く州で連邦政府の大気清浄化法による要求項目をクリアできたほか、70年代半ば以降、原子力によって8000万トンの亜硫酸ガスと4000万トンの窒素酸化物排出を抑制できたことを明らかにした。また、無尽蔵に供給可能なクリーン・エネルギーとしてブッシュ政権は水素燃料の可能性に注目している。しかし、その実現には今後さらに数10年の時間が必要であり、この点においても原子力は水素燃料と同じ効果を期待できると同長官は主張している。

さらに、地球温暖化に関しては「温室効果ガスを出さずにかなりの割合の電力供給が可能なエネルギー源がこの議論の中心と考えている」と前置き。京都議定書の支持者が提唱している経済成長を犠牲にした提案よりも原子力を利用する方がよほど温室効果ガスの削減に威力があるとの考えを提示した。この点について同長官は、ブッシュ政権は再生可能エネルギーの開発に力を入れる方針であり、その利点を批判するつもりはないとする一方、DOEとしては原子力も再生可能エネと同様、クリーンなエネルギー源であるという事実が公正に取り扱われることを期待すると訴えた。

このほか同長官は、世界の原子力発電所が70年代と比較して性能、安全性、信頼性、価格などのあらゆる面で格段の進歩を遂げたという事実に改めて言及するとともに、今後、原子力を一層拡大していくためにブッシュ政権が取り組んでいる活動について説明。原子力事故に対する賠償責任問題やユッカマウンテンで進めている放射性廃棄物最終処分場計画についても、進展状況を明らかにした。


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