[原子力産業新聞] 2002年9月12日 第2152号 <3面>

[フィンランド] エネルギー産業連合会が欧州の電力需給予測、公表

フィンランドのエネルギー産業連合会(FINERGY)は8月26日、今後20年の間に欧州における電力生産量と消費量の落差は次第に大きくなり、過度の電力輸入に陥ることになるとの電力市場予測を公表した。

同連合会の作業グループが作成した今回の報告書は、フィンランドと北欧地域に限定して2年前にまとめた「2015年までの電力市場予測」を発展させたもの。エネルギー政策オプションに関する見解を提示するという内容ではなく、フィンランドに新規原子力発電所の建設承認という決断を下させたのと同様の電力需給原則に欧州全体がまもなく向かうことになるという事実に焦点をあてているのが特徴だ。

対象国はフィンランドのほかに、スウェーデン、ノルウェイ、デンマーク、ドイツ、フランス、英国、イタリア、ベネルクス諸国、ロシア、ポーランド、バルト諸国などで、各国の電力需給および送電について予測。同報告書はまた、欧州連合域内におけるエネルギー関連政策決定や地球レベルの燃料市場、発電技術予測についても検証を加えており、具体的に次のような数値を挙げている。

▽バルト諸国およびロシアを筆頭に対象国の電力消費量は継続的に増加していくものの、伸び率はこれまでよりも緩やか。ロシアの消費量は90年代に20%減少したが、今後は年に少なくとも2%の伸び率で上昇していき、2010年には90年代のレベルを再び上回ると予測される。

▽対象国では今後10年間に合計6000万〜7000万キロワットの発電容量が追加で必要になるが、このうち約半分はロシアに設置される見通し。今後20年間で見ると、現在の欧州域内では消費量の増加と閉鎖設備と同量の容量を賄うため、新規に2億〜3億キロワットの発電容量が必要と予想される。

▽対象国の多くで消費量の増加が生産量の伸び率を上回る。例えば、2010年に北欧諸国の需要量は水力による発電量が平均レベルだった場合、供給量を17兆キロワット時ほど超過すると見込まれる。

▽ガス火力による発電量の伸びは最も急速で、英国では2020年時点で電力の8割までをガスで賄うことになる。北海での生産量が減少していくため、EU域外からガス輸入する必要性が次第に高まってくると予想される。水力を除く再生可能エネの利用も拡大し続けるが、20年という時間枠の中では主としてほかの電源の補完的役割に停まる見込み。化石燃料と原子力が今後も主要エネルギー源であることは変わりはないが、全般的な予想はどちらについても不透明。

▽仮に温室効果ガス排出権取り引きに関する欧州連合の提案指令が実行に移された場合、電力の市場価格は欧州全域で大幅に上昇することになるだろう。


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