[原子力産業新聞] 2002年9月12日 第2152号 <3面>

[BNFL] 市場での競争力、強調

英原子燃料会社(BNFL)は5日、AP1000のような最先端の原子炉設計により原子力は今まで以上に手頃な価格の電力供給が可能になるとの報告書を政府に提出した。

この報告書は現在英国政府が進めている新たなエネルギー政策策定審議の一環として同社がまとめたもの。調査は独立の立場の専門家達が実施しており、BNFLとしては「原子力発電にコスト面で強力な競争力があるという事実が外部から審査・確証された」と評価。AP1000の設計に反映されているように実証済みの既存技術を実質的に発展させることによって原子力の経済性改善が可能になったと強調している。

同社のN・アスキュー最高経営責任者は、「当社はすでにAP1000設計の認可前審査を規制当局に要請するなど、この原子炉を英国市場に供給する具体的な準備を進めているところだ」と言明。すでに米国で認可されてるAP600に続き、同設計をスケールアップしたAP1000についても2004年までに米国で設計認証が得られると見込んでいることを明らかにした。同氏はまた、原子力は低炭素経済を実現する道であるとともに、環境に優しく信頼性の高い大規模なエネ供給を保証する電源だと訴えている。

同氏によれば、AP1000が100万キロワット発電するのに要する原子燃料は年間25トンに過ぎないが、石炭火力で同じだけ発電するには年間に約300万トンの石炭が必要。仮に世界中の原子炉をガス火力発電所で代替した場合、CO2の排出量は年間10億トン増加する計算で、これが石炭であればさらにこの倍のCO2が排出されることになると強調した。このような見積りから同氏は、「英国内の原子炉すべてをAP1000で取り替えたとしても、これらの全運転期間を通じて追加で排出される放射性廃棄物の量は10%程度に過ぎない」と指摘している。

アスキュー氏はさらに、英国政府が新たな長期エネルギー政策を策定する上で原子力や再生可能エネのように低炭素性の代替エネ源を維持するとともに積極的にこれらを開発、市場の需要を賄えるよう運転していくことはもはや避けられないとの認識を表明。炭素を排出せずに発電できるという利点が明白であるにも拘わらず、原子力は市場では差別されていると訴えた。

なおBNFLでは、原子力オプションを利用可能な状態にしておくには次のような活動が必要だと指摘している。すなわち、(1)いかなる電源であれ新たなベースロード電源の開発が促進されるような価格で長期の電力契約を結ぶ(2)すべての低炭素電源に同様の開発促進条件を提供する(3)規制当局による新たな原子炉設計の承認が早まるよう官民共同の資金確保を可能にする(4)使用済み燃料と放射性廃棄物の処分コストについて投資家に確実な情報を提供する‐‐など。


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