[原子力産業新聞] 2002年9月26日 第2154号 <4面>

[サイクル機構] 次世代モニタ技術実用化に道

核燃料サイクル開発機構は19日、プルトニウムと天然の放射性物質を迅速かつ正確に測定可能にする次世代放射線モニタリングシステムの開発を進め、同解析法を使って、プルトニウムからの放射線と天然の放射性物質からの放射線の分離に初めて成功したことを明らかにした。

原子力施設内外の放射線監視において、核燃料物質(プルトニウム、ウラン等)から発生する放射線と、天然に存在する放射性物質(ラドン等)からの放射線を迅速かつ正確に測定できる、新たな技術(時間間隔解析法)を用いたモニタリングシステムで、同機構は、今回の成果によってシステムの完成に大きく前進したとしている。

原子力施設内の放射線管理や周辺環境の放射線監視において、天然に存在するラドン等からの放射線と施設からの放射性物質による放射線を迅速に分離し、施設からの影響を正確に評価することは極めて重要。特にα線を放出するプルトニウムやウランは、β線、γ線を放出する放射性物質に比べて管理基準が厳しく、また天然の放射性物質による測定への妨害が大きいことから、これらを取り扱う再処理施設や核燃料加工施設では、天然の放射性物質の影響を除去できる正確で迅速な測定方法の開発が大きな課題になっていた。

このため、事故時などにプルトニウムやウランの量を迅速かつ正確に測定することは困難だった。臨界事故後、原子力防災体制の整備が行なわれており、緊急時にプルトニウムやウランの量を、迅速かつ正確に測定することができる技術の開発が急がれている。

今回、時間間隔解析法という技術を応用して電子回路を利用し、プルトニウムからの放射線と天然の放射性物質からの放射線の分離測定に初めて成功したもの。

同技術は、天然の放射性物質であるラドン等は、短半減期放射性物質であるため、連続した放射線の信号が一定の時間間隔内に測定器に入射する確率が高い性質を利用して、入射した放射線の信号を統計処理し、電子回路上でこれら天然の放射性物質の妨害を除去するもので、今回の成功は、これまで大きな課題となっていた、プルトニウムやウランと天然の放射性物質との迅速な分離測定技術の実証を実現したものという。

サイクル機構では、今回の方法による実用モニタリングシステムの完成に向けた研究開発を続け、今後、プルトニウムやウランを取り扱う施設における放射線管理や環境放射線モニタリング等、広範な利用も視野に入れて研究を進める方針。


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