[原子力産業新聞] 2002年10月10日 第2156号 <3面>

[IEA] 世界のエネ需給予測、公表

国際エネルギー機関(IEA)のR・プリドル事務局長は9月21日、大阪で開かれていた国際エネルギー・フォーラムで2002年版の「世界エネルギー予測」を公表。2030年までに世界のエネルギー総需要量は現在の3分の2増加するなどの見通しを明らかにした。

同事務局長はまず、世界は今後30年間は豊かなエネルギー源に恵まれるものの、それらは利用し易く信頼性の高いエネ供給に結びつくよう転換しなければならず、エネ安全保障という点で確実に新たな懸念が生じてくると指摘。エネ消費国は今後特に石油、それも少数の生産国への依存度を高めていくと予想されるが、それらのいくつかは政情が不安定な地域の国だと強調した。こうした地域で採取したエネルギーを市場に送り込むには数兆ドル単位の投資が必要だが、世界ではまだ数多くの人々が近代的なエネルギーから切り離された状態にあり、極度のエネルギー不足が終息に向かっているとは言いがたいと同事務局長は訴えた。また、多くの国で真剣に取り組んでいるも拘わらず、地球環境に決定的な影響を及ぼすCO2の排出量は今後も増え続けると警告している。

同事務局長によると、大阪でのフォーラムはエネルギー供給国と消費国が建設的な対話を交わす機会とするのが目的の1つであり、IEAが2年ごとにまとめている「世界エネルギー予測」にも、両者に対するメッセージが等しく込められている。データとしては現在から2030年までの世界のエネルギー需給や価格、取り引き、炭素排出量などの傾向について予測。今回は特に、「エネルギーと貧困」に関する新章や中国のエネ供給保障対策についての特別考察、さらには基本の予測シナリオとは別に、OECD加盟諸国が現在検討中のエネルギー効率改善政策および気候変動抑制対策のすべてを採用した場合を想定した「代替政策シナリオ」を提示しているのが特徴だ。同予測での主要なポイントは次の通り。

▽基本の予測シナリオでは世界の一次エネルギー需要量は年率1.7%上昇していき、2030年には石油換算で年間153億トンレベルに到達する。これらの需要の9割以上は化石燃料で賄われるが、中でもガスの消費量は2倍に膨らみ、エネルギー需要におけるガスのシェアは23%から28%に上昇する見込み。

▽世界のエネルギー関係のCO2排出量は年率1.8%で増加し、2030年には現在の約7割増しの380億トンに達すると予想される。途上国の排出シェアは34%から47%に急増し、中国だけで増加分の4分の1を占める計算。京都議定書に調印したOECD諸国の排出レベルは目標値を29%上回る125億トンになると考えられる。

▽世界の一次エネ需要における原子力のシェアは2030年までに5%に落ちこみ、発電シェアも現在の17%が2030年には9%程度に低下する見通し。ただし、アジアを中心にいくつかの国で発電容量が拡大すると予想される。

▽今後30年間で最も需要が大きく増えると考えられるのは(主に途上国における)電力と輸送の2部門。輸送では年率2.1%、電力部門は2.4%という速度で増えていき、2030年時点の電力需要量は現在の倍になる見込みだ。


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