[原子力産業新聞] 2002年10月17日 第2157号 <2面>

[サイクル機構] 中曽根元首相シンポで講演

「全原子力体系の総点検が必要」‐‐。中曽根康弘元首相は11日、都内で開かれた核燃料サイクル開発機構主催のシンポジウムで講演し、東電不正問題等にゆれる原子力界に対して「自主、民主、公開」という原子力開発草創期の原点を見つめ直して再出発をはかるよう呼びかけた(=写真)。

同氏は、原子力開発の歩みを山脈にたとえ、「我々は原子力山脈の峰歩きをしてきたが、疲れが見えているところもある。気を引き締めねばならない」、「40数年、先達がやってきたことを無に帰してもらっては困ると思った」と指摘。

そのうえで同氏は、わが国で原子力関連法案の立案に奔走した当時のエピソードを紹介。原爆というリスクの一方で、平和利用という可能性に踏み出した当時を振りかえりながら、「原子力問題は人類文明を左右するバイタル(vital)な問題になるだろうとの予測は当時からあったが、発電だけでなく放射線利用などに広く展開している」とし、軍事利用というリスクの一方で「無限の可能性をもつエネルギーは原子力以外にはない」と強調。原子力の基本政策に踏み込んで見直しを行う必要性はないとの考えを示した。ただ「惰性、怠慢で問題が起こることはよくない」とし、「原子力を正しく発展させることが我々の共同の責任だ」と述べて、原子力関係者に一層の努力を呼びかけた。


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