[原子力産業新聞] 2002年10月17日 第2157号 <2面>

[韓国] 蔚珍4号のSG細管破断事故概要

本紙先週号1面で既報のとおり、これまで全容が明らかでなかった韓国の蔚珍(ウルチン)原子力発電所4号機で4月5日に発生した蒸気発生器細管破断事故の詳細が、7、8両日に開かれた「日韓原子力産業セミナー」の席で明らかにされた。発表より事故の概要を紹介する。

ウルチン4号機は韓国標準型炉(KSNP)の2基目にあたり、電気出力100万キロワットの2ループ式加圧水型炉(PWR)。韓国重工業(現在の斗山重工業)が主契約者となり、1992年5月に着工、1999年12月31日に商業運転を開始した。2001年の設備利用率は93%、運転サイクルは18か月。2基の蒸気発生器はH14型、細管の本数は8214本、細管材質はインコネル600HTMA。

事故の経緯

細管破断は、今年4月5日18時、4号機が燃料交換のために原子炉を停止した約18時間後に起こった(事故シーケンスは表参照)。原子炉は温態停止状態で、冷却途中だった。SG細管破断は韓国では初めて。

破断部の状況

破断した細管はR14−C38(細管束のほぼ中央)にあり、破損部は「T」字形になっており、縦方向に約80ミリの亀裂が「魚の口」状にぽっかりと開口し、その上部の円周方向の破断により細管は完全に分断されている。はじめに縦方向の破断が起き、次に円周方向の破断が起こったものと考えられる。縦方向の破断は上部には円周方向の破断まで45度のねじれを持って続いており、下部は管板上部まで続いている。T字形は円周方向の破断と「魚の口」状の縦方向の破断とが組み合わさったものである。

この破断は、主に管板から円周方向の破断箇所に向けて伸びた縦方向の応力腐食割れ(SCC)によって引き起こされたものだ。根本原因はまだ明らかではないが、製造段階で管板付近で細管を過度に拡管したため、軸方向に膨らみができ、そこからSCCが発達した可能性がある。

事故後の対応

今回の破断は、(1)複雑な破断モード、(2)リーク・ビフォーア・ブレイク(LBB)があてはまらない、(3)破断が温態停止後の冷却途中に起こった、(4)過去の細管検査記録にSCCの兆候がない、(5)細管壁を貫通するSCCの急速な成長――などの特徴を持つ。

この細管の過去の検査記録と事故後に実施された検査から、今回の事故はこの細管に特有のものであり、同様の特徴を持つ細管はないと結論づけた。

また、放射線警報機が破断後13分間作動しなかったことを受け、復水器真空系とSGブローダウン系の放射線モニタ警報のしきい値を下げた。次に、運転員の非常運転手続きについては、細管破断は通常運転中が想定されていたため、今回の経験を踏まえ、非常運転手続きを改訂した。

この事故を受け、韓国の規制当局は「SG細管高度検証プログラム」を作成、韓国で多くの対応策が実施に移されている。


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