[原子力産業新聞] 2002年10月26日 第2158号 <1面>

[米国] 北朝鮮がウラン濃縮で核開発「中止へ国際圧力を」

米国務省のバウチャー報道官は、16日、声明を発表し、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)が、1994年に結ばれた「米朝枠組み合意」等の国際約束に違反し、核兵器製造のためにウラン濃縮計画を進めていたことを明らかにした。これは、北朝鮮を訪問していたケリー特使(国務次官補)が明らかにしたもので、北朝鮮側は当初、否定したものの、翌日になって計画の存在を認め、米朝枠組み合意は無効になったと述べたという。ケリー特使によると、北朝鮮は過去数年間にわたりウラン濃縮活動を行ってきたという。

パウエル米国務長官は、20日に米NBCテレビとのインタビューに答え、「北朝鮮は1、2個の核兵器を持っているかもしれない。少なくとも数個の核兵器を作るに十分な核物質を持っている」とし、「北朝鮮の周辺諸国」が、同国に核開発をやめるよう最大限の圧力をかけることが重要と述べた。

米朝枠組み合意についてパウエル長官は、「二国間協定を片方の国が無効とするなら、できることは少ない」と述べつつも、東アジア地域の友好国と協議を続けていると述べ、同合意にもとづく朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)の行方も不確実になっている。

濃縮機器の供給元について、18日にニューヨーク・タイムズ紙が米情報機関筋の話としてパキスタンをあげたが、パウエル国務長官は、「18日にその件でパキスタンのムシャラフ大統領と話をしたが、同大統領は『400%あり得ない』と保証した」と述べた。

ブッシュ大統領は22日の記者会見で、「金正日(総書記)に、平和のため武装解除するよう説得しなければならない。私は平和理に解決できると信じる」と述べ、訪米する中国の江沢民国家主席や、26日のAPECで日・韓首脳と協議していく意向だ。

IAEAは北朝鮮に対話呼びかけ

国際原子力機関(IAEA)は18日、北朝鮮のウラン濃縮開発の報に「深い懸念」を表明、米国と北朝鮮に詳しい情報を求め、北朝鮮への上級職員派遣や北朝鮮からの代表団受入れの用意があると発表した。

「核開発の放棄を求める」

政府は、29、30日の両日、マレーシアのクアラルンプールで日朝国交正常化交渉を再開、核問題やミサイル問題を含む安全保障問題の解決のため、「日朝安全保障協議」設立合意を求めることを明らかにした。

日朝交渉における核開発問題の扱いついて、外務省の竹内行夫事務次官は21日、「重要な問題として日本側から提起し、核開発計画の目に見える形での放棄を求める」と述べた。また、来日中のケリー国務次官補との会談で、米国が米朝枠組み合意の破棄を決めた事実はないことを確認、KEDOについても関係国間で協議を続けることを明らかにした。核開発問題に対して北朝鮮が誠意ある態度を見せない場合、竹内事務次官は、「平壌宣言に違反するというようなことであれば、当然我々としても考えなければならない」としている。


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