[原子力産業新聞] 2002年10月31日 第2159号 <1面>

[原子力安全・保安院] 格納容器漏洩率偽装福島一・1に1年間停止処分

経済産業省原子力安全・保安院は25日、東京電力福島第一原子力発電所1号機(46万`h・BWR)で平成3年および4年の定期検査中に行われた格納容器漏洩率検査のさい、容器内に不正に圧縮空気の注入などが行われ、国の定期検査を妨害したことが「極めて悪質」として、同機に対して1年間の原子炉停止処分を行うと発表した。

保安院は、「原子炉の安全機能上、極めて重要な部分において意図的な偽装が行われるという前例のないもの」とし「国の定期検査を妨害したものであり極めて悪質」と判断、原子炉等規制法にもとづく行政処分を検討、11月22日に聴聞を行い、1年間の運転停止処分を行う方針だ。

9月25日の新聞報道が発端で、保安院は東電および点検作業を請け負った日立製作所から事情聴取、調査状況を早急に報告するよう電事法にもとづき命令していた。東電は25日までに中間報告をまとめ、保安院に報告した。

東電の報告では、平成3年の第15回定検の漏洩率測定時に格納容器内に空気を注入しデータ偽装の事実を確認、翌年の第16回定検時にはこれに加えて、漏洩を防止するための閉止板を取り付ける行為があったことを認めた。保安院は不正行為の具体的な方法等が現時点で判っていない等、東電に引き続き調査を行い報告するよう求めた。

同発電所の保安規定では、定検時に格納容器を冷却材喪失事故の状態に模擬して密閉し、窒素ガスにより2.8キログラム/平方センチに加圧、その後6時間にわたり格納容器内の圧力変化や温度変化を測定し、漏洩率が0.5%/日以下であることを確認しなければならない。電事法120条では、定検の妨害または忌諱に対する30万円以下の罰金を定めているが、すでに3年の時効が成立している。

保安院は福島第一1号機を停止・冷却後、速やかに漏洩率検査を再実施し、その結果を報告するよう報告徴収命令を発し、同機は26日に停止した。保安院は再検査では準備段階から立ち入り検査を実施、検査官を要所に配置する。東電の他の原子炉にも、運転停止中のものは運転再開前に、漏洩率の確認等、厳格な検査を行い、運転中の原子炉についても当該機と同様の点検計画を速やかに策定するよう指示。東電以外の電力会社に対しても、過去10年間に遡り格納容器漏洩率検査の記録を再確認、今年度中に報告を求めるとともに、直近の漏洩率検査については11月15日までに報告するよう求めた。


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