[原子力産業新聞] 2002年10月31日 第2159号 <3面>

[米・NRC] デービスベッセの上蓋腐食で報告書

米国原子力規制委員会(NRC)の経験学習タクスフォース(LLTF)は9日、今年3月にデービスベッセ原子力発電所の圧力容器(RPV)上蓋で発見された腐食について、NRCの審査手順や産業界によるホウ酸腐食抑制対策活動の不備により、この異常事象を事前に防止することができなかったと分析する報告書を公表した。

LLTFの報告書はデービスベッセの事象からNRCが原子力安全規制プロセスを遂行する上で学ぶべき反省点を評価するためにまとめられたもの。(1)原子炉の監視手順(2)規制手順(3)研究活動(4)国際慣行(5)NRCの「一般問題プログラム」‐‐の5分野について、地元州の代表者立会いのもと、NRCの事象調査チームや診断評価チームと同じ手法で審査を実施したとしている。

結論の中でLLTFは、すでに10年まえからNRCと原子力産業界ではデービスベッセと同様の事象が発生する可能性を認識していたと指摘。国内外で稼働するPWRの運転経験や各種の実験、エンジニアリング分析を含む研究活動など、関連情報が豊富だったことから、今回のような事象の発生は予見可能だったと結論づけた。それにも拘わらず同事象が発生してしまった理由としてLLTFは、NRCと産業界が「RPV上蓋で深刻な腐食が起きる前に上蓋貫通部(VHP)ノズルからのホウ酸水漏洩は探知できるのでこのような事象が発生する確率は低い」と結論付けてしまったためだとしている。

LLTFによると、NRCとデービスベッセ発電所(DBNPS)、および産業界は先ず第一に、発電所での運転経験を適切に審査、評価、対応するのを怠ったほか、DBNPSは発電所の安全性に適切な注意を払っていなかった。NRC側もDBNPSの安全実績を評価するための関連情報集約を怠ったと指摘。NRCと産業界はアロイ600製VHPノズルのクラックを安全上急を要する問題とは捉えず、さらなる評価作業を先延ばしにしてしまったと非難した。

LLTFはまた、NRCと産業界はVHPノズルの検査を引き続き目視で行っていたが、ノズルのクラックや損傷の程度を調べるのには不十分だったと強調している。

このような評価審査の結果、同タスクフォースはDBNPSで発生したような事象にNRCが対処していくためには特定の活動が必要だと勧告。具体的な分野として、(1)検査基準(2)NRCと産業界が運転経験を評価するための手順(3)NRCの規制プログラムや手順、能力の評価CNRCスタッ フの訓練と経験(5)原子炉冷却材圧力バウンダリ(RCPB)の健全性に係わる技術仕様の規制要求項目(6)RCPB機器の産業コードに関する検査要求項目(7)原子炉冷却系からの漏洩モニタリングに関する慣行と能力(8)応力腐食割れとホウ酸腐食に関する技術情報と基準(9)NRCによる許認可手続きの手引きと実行‐‐などを挙げている。


Copyright (C) 2002 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.