[原子力産業新聞] 2002年11月7日 第2160号 <1面>

[原子力安全・保安院] 新検査法人設置案も

東京電力の原子力発電所自主点検記録等不正問題の再発防止にむけた電気事業法と原子炉等規制法の改正案が、5日に閣議決定され、再発防止対応をになう新検査法人「原子力安全基盤機構」設置法案とあわせて同日、国会に提出された。原子力安全・保安院では今臨時国会での成立をめざす方針だ。

再発防止関連規制は、自主点検の法的位置づけの明確化と国による確認など検査の実効性向上、設備の健全性評価の義務化、罰則の強化による不正行為に対する抑止力強化等、緊急に必要となる事項について法律改正を行うとともに、制度運用についても改善をはかることがその主な内容。

現在でも、国が安全基準に適合していないとして出した改善命令に違反した場合、300万円以下の罰金が科されるが、改正案は、個人には3年以下の懲役、法人には3億円以下の罰金を科すなどの罰則強化も盛り込んだ。

記録等に不正があった自主点検については、「定期自主検査」として法定検査に格上げを行い、検査結果の記録や保存を義務付けることにした。また運転を開始してからの設備健全性をはかる「健全性評価基準(維持基準)」を導入することとした。資料の提出を義務付ける報告徴収の命令対象も、電力会社など原子力事業者以外に、原子力施設の保守点検を請け負った業者にまで拡大するとしている。

こうした再発防止策を担う独立行政法人として設置される「原子力安全基盤機構」は、今年3月の閣議決定「公益法人に対する行政の関与の在り方の改革実施計画」で、原子力安全規制のさらなる効率的かつ的確な実施を図るため、国の原子力安全行政部門の事務の一部と、関連する公益法人への委託実施事務を、この独立行政法人に移管して実施する旨決定されたことを受けての法案化。

今回の不正問題の再発防止策として導入される定期自主検査に対する審査等についても、この新法人で実施する。既存の原子力発電技術機構や発電設備技術検査協会等の関連行政支援業務が移管される。

具体的には、原子力施設及び原子炉施設に関する検査等のうち、一部を機構が実施(申請受付・合否判定は国)するものとして、電気事業法に基づく使用前検査、定期検査等、原子炉等規制法に基づく使用前検査、施設定期検査等。また機構が実施するものとして電気事業法に基づく溶接安全管理審査等、今回の再発防止策に盛り込まれた定期自主検査に係る審査、原子炉等規制法に基づく溶接検査等の業務を行う。

また原子力施設及び原子炉施設の設計に関する安全性の解析及び評価や、 原子力災害の予防、拡大防止等、さらにエネルギーとしての利用に関する原子力の安全の確保に関する調査、試験、研究等も推進する予定。


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