[原子力産業新聞] 2002年11月7日 第2160号 <3面>

[EC] 水素・燃料電池で諮問機関設置

欧州委員会(EC)は10月10日、欧州連合(EU)域内における輸送やエネルギー生産、その他の関連分野で水素を燃料とする燃料電池の潜在的な利点を評価するため、「水素および燃料電池技術に関する高レベル・グループ(HLG)」を発足させた。

諮問に答える役割を担う非公式機関の同グループはEU加盟国の電力・エネルギー企業や自動車メーカー、公の研究センター、政策立案者など関連分野のトップレベルの代表者のほか、フランス原子力庁のP・コロンバニ長官や84年にノーベル物理学賞を受賞した核物理学者のC・ルビア氏などで構成されている。ECが燃料電池をエネルギー転換器として導入したり、実用化の見通しや経済的な効果など、水素や電気を基盤とする持続可能なエネルギー経済について判断を下せるよう助言することになっている。

HLGはまず手始めに、活気に満ちた燃料電池産業と持続可能な水素エネルギー経済の実現に向けて、利用技術革新や市場販売、普及、インフラ整備、安全性、官民の協力、水素製造部門への投資‐‐などを斟酌した上で、研究開発項目や実用化対策など欧州全体として取るべき行動を2003年の半ばまでに報告書にまとめる。その後は戦略的な研究課題などを盛り込んだ一層詳細な行動計画の作成に繋げたい考えだという。

ECの発表によると、独立の調査機関が実施した市場調査は燃料電池を推進力とした輸送機関産業が今後10年間に年率40〜60%で成長していくと予測しており、2020年時点で163億ユーロ(約2兆円)、2040年には520億ユーロ(6兆3000億円)という規模に達するとしている。この分野における研究開発では米国と日本が特に進んでいる点をECは指摘。EUの現在の第五次研究開発枠組み計画(99年〜2002年)における開発予算は1億2000万ユーロであり、年間予算では米国の3分の1、日本の4分の1に過ぎない事実を強調した。03年〜06年までの第六次計画ではエネルギー・輸送関係の総予算が21億2000万ユーロであることから、燃料電池関係の研究には第五次計画より多くの予算が割り当てられる見込みだとしている。

燃料電池のエネルギー源となる水素の製造には、ナフサや灯油などの液体燃料、メタンや合成ガソリンを改質するほかに、水の電気分解という簡単な方法が存在することから、ECのL・デパラシオ副委員長は、「再生可能エネルギーや化石燃料だけでなく原子力にも活躍の道はある」と指摘している。


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