[原子力産業新聞] 2002年11月28日 第2163号 <3面>

[英王立学会] CO2削減で政府に提言

英国の様々な分野で指導的な地位にある学者達で構成される王立学会は18日、英国の二酸化炭素排出量が再び増加していると警告するとともに、既存の気候変動税に代わって新たな炭素税、もしくはCO2排出認可制度を導入するよう勧告。このような方策により原子力や再生可能エネルギーの競争力が増大するとの見解を表明した。

「CO2排出量を削減するための経済手段」と題されたこの報告書は、英国政府が来年刊行を予定している「エネルギー政策に関する白書」への提言として、E・アッシュ卿を議長とする同学会の作業グループがとりまとめたもの。この中でまずアッシュ卿は、現在の気候変動税は経済上、効果的な方策とは言い難いと指摘。一般家庭や輸送部門における化石燃料の利用に適用されていない一方で、原子力のようにCO2をほとんど排出しない電源にも課せられており、「炭素税と言うよりはエネルギーの利用に課されている環境税のようなものだ」と訴えている。

同氏によれば、政府がエネルギー白書で取り上げる課題として最も重要なのはCO2排出価格をどのように設定するかという点。作業グループの科学者や経済学者達はあらゆるオプションを検討した結果、すべてのCO2排出者に対して新たな炭素税を課するか、排出量を管理する認可制度を適用するのが最も効果的な方策だとの結論に達したと説明した。新たな炭素税では、導入当初はキロワット時当たり1ペニーの課税、ガソリン1リットルあたり6ペンスの値上げになると計算。一般家庭など社会の中で立場の弱い者に対しては国の保護金などを通じた補償が必要だとしている。

王立学会は英国のCO2排出量が再び増加し始めた以上、白書を契機にこの傾向を逆転させなければ、気候変動という潜在的な破滅の到来に英国が拍車をかけることになると警告。この目的を達成するための選択肢は新規原子炉を建設するか、CO2を排出しない代替エネルギー源を生み出す戦略を展開する‐‐のどちらかになると明言した。ただし、新たな原子炉の建設には次のような要素が不可欠だとしている。すなわち、(1)政府による意志(2)同一型炉をシリーズ建設する長期戦略(3)計画/認可手順を数年ではなく数か月単位で完了するよう再編(4)新規炉建設戦略を実行するしないに係わらず廃棄物処分戦略を進展させること(5)テロ攻撃のリスクに対する認識と緩和策策定‐‐などだ。

同学会の報告書はさらに、原子力産業界には一層安全かつコスト安で工期も短い新しい原子炉の計画があり、政府が原子力推進政策を選択すれば、産業界は現在の複合サイクル・ガス・タービン発電のコストに近づくことが可能との見方を提示。もしそうなれば、新たな炭素税や認可制度の下では化石燃料発電は割高になり、キロワット時あたり1ペニーという炭素税は原子力や再生可能エネルギーの競争力を十分高めることになると指摘している。


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