[原子力産業新聞] 2002年12月5日 第2164号 <3面>

[米国] TMIの追跡調査で影響なし

米国で79年に発生したスリーマイルアイランド(TMI)原子力発電所事故後の影響に関する最新の追跡調査で、周辺住民の健康には長期的にも何ら影響がなかったことが明らかになった。

この調査は同発電所が立地するペンシルベニア州ピッツバーグ大・大学院の科学者達が実施したもの。事故後20年以上が経過した同発電所周辺住民への健康影響について可能性を調べたところ、これまでに実施された複数の調査と同様、がん死亡者数の増加など同事故に起因すると思われる悪影響は見受けられなかったと結論付けている。

調査方法としては、TMIから放出された放射性物質で被曝したと思われる住民の死亡率と近隣の3つの郡およびペンシルベニア州全体の死亡率が比較された。調査報告書は「喫煙習慣の有無やライフスタイル、自然放射線のレベルなどを考慮すると、発電所から半径5マイル(約8キロメートル)圏内の住民3万2135名の死亡率に重大な影響を及ぼしたという確実な根拠は見当たらなかった」と説明。ただし、ある種のがんについてはリスクが若干高めになる可能性が現存するほか、一定の被曝線量との関連性を完全にぬぐい去ることはできなかったと言明している。

米原子力エネルギー協会では、今回の調査のフォローアップ期間が79年から98年という長期にわたったほか、サンプル数の規模や過去の調査結果との比較などの点で大きな意義があると指摘。いくつかの調査では、事故後10日間TMI地区に居住していた平均的な住民の被曝線量は、米国の一般的な個人が自然界から被曝する年間線量よりも低かったという結論が出ていたと強調している。


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