[原子力産業新聞] 2003年1月16日 第2169号 <1面>

[小泉首相] クルチャトフ研究所で講演

ロシアを訪問中の小泉首相は、11日、モスクワのクルチャトフ研究所での「国際科学者会議」で講演、退役原子力潜水艦の処理や解体核兵器プルトニウムの処分など、非核化でのロシアへの支援や、国際熱核融合実験炉(ITER)での日ロ協力などについて語った。この会議はクルチャトフ博士の生誕百年を記念して、10〜12日に開かれたもの。

小泉首相はまず、20世紀が人類に経済面での飛躍をもたらしたが、同時に、悲惨な戦争を経験した世紀となったとし、21世紀には、人類の叡智を結集し、科学技術を平和と繁栄のために使わなければならないとして、「核兵器は廃絶されなければならない」と強調、核兵器のない世界の実現への協力を呼びかけた。

この点から北朝鮮の核不拡散条約(NPT)脱退宣言について言及、「極めて遺憾であり、重大な懸念」を表明、プーチン大統領とも、ロシアをはじめ関係諸国やIAEAと協力することで一致したと述べた。

小泉首相は、ロシアの「20世紀の負の遺産」は、膨大な大量破壊兵器や危険な状態で放置された退役原潜だとし、世界の平和・安全と地球環境を守るため、「早急に片付けていかなければならない」とし、このため日本政府が昨年6月のカナナスキス・サミットで、2億ドルあまりの貢献を行うことを決めたと述べた。退役原潜解体では、実施促進のため、日ロ合同のチームを作ることになり、小泉首相は、この事業を「希望の星(ズベズダ・ナデージュディ)」と名付けたいと述べた。

解体核兵器からの余剰プルトニウムの処分について、日ロによる高速増殖炉の技術開発での協力により、世界に先駆けて、原爆2〜3個分の兵器級プルトニウム処分に成功、日本は2億ドルの支援のうちの1億ドルをこれに充てると述べた。

また、国際科学技術センター(ISTC)の枠組みの下で、これまでに3万6000人の科学者・研究者が、平和目的の研究に従事するなど大きな成果をあげ、日本からこれまで約5600万ドルの支援が行われたとし、今後も積極的に協力していく方針。

21世紀の科学技術として小泉首相は、資源面での制約や環境への負荷がほとんどない核融合の重要性を指摘、国際熱核融合実験炉(ITER)が「日ロパートナーシップの意義を象徴的に示すプロジェクト」だと述べた。ロシアが製作した超伝導コイルを、日本の試験装置に組み込み、トロイダル磁場コイルの実現性を実証したことは、「日ロ協力の輝かしい成果」と強調した。


Copyright (C) 2002 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.