[原子力産業新聞] 2003年1月23日 第2170号 <3面>

[ベルギー] 議会で脱原子力法案が成立へ

ベルギー議会の上院は16日、34対16(棄権2)で原子力発電所を段階的に廃止する法案を可決した。下院がすでに昨年12月6日に同法案を承認していることから、同法案は今後、国王の署名により正式に成立。総発電量の約6割を賄う国内の原子炉7基を2015年から順次、閉鎖していくことが確定した。

脱原子力法案は緑の党のO.ドゥルーズ持続可能エネルギー開発担当相が中心となって推し進めてきたもので、自由民主市民党のG.ヴェルホフスタット首相が率いる三党・連立政権は昨年3月、この法案を閣議了承。7月には同法案の最終版を承認していた。それによると、国内で稼動する原子炉7基、599万5000キロワットは今後、商業開始後40年を経過したものから閉鎖していき、新規原子炉の建設は行わない。75年に運開したドール原子力発電所1号機(41万2000キロワット、PWR)が2015年2月に閉鎖されるのを皮切りに、2025年9月には最期に残ったチアンジュ発電所3号機(106万5000キロワット、PWR)で廃止措置が取られることになる。ただし、「エネルギーの供給保証上、不可抗力と考えられる場合は例外措置を取る」ことも同法案には明記されている。

今回の法案可決により、ベルギーはオーストリア、スウェーデン、ドイツに続いて欧州で脱原子力を法制化した国となるが、原子力発電への依存度はこれらの諸国に比べると58.2%(2001年実績)と格段に高い。この点についてドゥルーズ・エネルギー相は、「原子炉を廃止しても欧州連合域内における電力市場の自由化により、電力価格が上昇することはない」と断言。風力や太陽熱など再生可能エネルギー開発への投資を拡大するとともに、ガス火力発電所を増設することで原子力容量の損失分は穴埋めできるとの考えを示している。

一方、同国の原子炉すべてを操業しているエレクトラベル社は、脱原子力は経済的に引き合わないとして政府の再考を促すとともに、「技術や生態環境などの面からも原子炉の早期閉鎖決定を遺憾に思う」と発表。政府は今回のような法案を導入する前に原子力の代替電源について調査しておくべきだったと指摘したほか、化石燃料の利用増加はベルギーの京都議定書の温室効果ガス排出削減目標達成を妨げることになると警告した。


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