[原子力産業新聞] 2003年1月30日 第2171号 <1面>

[国連安保理] イラク問題報告「核関連査察は順調」

国連安全保障理事会は27日午前、エルバラダイ国際原子力機関(IAEA)事務局長と、ブリックス・国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)委員長から、イラクでの60日間の現地査察の報告を受けた。これは、イラクに現地査察を求めた安保理決議1441の規定によるもの。安保理は29日に再び会合を開き、今後の対応を協議する。

核兵器関連の査察を行っているIAEAのエルバラダイ事務局長は、「査察は順調に進んでいる」とし、1998年の査察停止以降にイラクが核兵器開発計画を再開した証拠は見つかっていないと述べ、今後数か月間の査察でイラクが核兵器開発を行っていない「信頼するに足る保証」を与えられるとした。

一方、化学・生物兵器とミサイル関連の査察を行っているUNMOVICのブリックス委員長は、イラクが原則的に協力しているとしつつも、神経ガスVXや生産された炭疽菌8500リットルの行方、スカッドミサイルの生産再開の可能性など、今後解明されなければならない点も多いとして、2月14日に追加報告を行うと述べた。

核兵器関連についてエルバラダイ事務局長は、1992年にIAEAの査察団がほとんどの施設を破壊・撤去し、94年には高濃縮ウランとプルトニウムを押収したとし、98年12月に査察が中断する時点では、イラクの核開発計画の重要な要素で見逃しているものはないと確信していたと述べた。

昨年11月27日に査察が再開された後は第一段階として、イラクの核開発に関する知見の再構築を行い、二か月間に106か所で136回の査察を実施、順調な進展を見せているとした。査察の進展の結果、第二段階として、他の国からの情報や衛星画像などで注意を引いた分野に焦点を絞る調査を行っている。

査察中に、遠心分離機製造に転用可能な強化アルミニウム管が発見され、安保理決議687号違反とされたが、ロケット製造用で遠心分離機製造には向かないことが判った。91年以降にイラク政府がウランを輸入しようとしたとの疑惑については、同政府は否定しているものの、情報が不十分としている。

安保理での報告後、議長国フランスのドラサブリエール大使は、査察が大きな困難もなく順調に進んでいるとしつつも、「まだ解明すべき疑問が残っている」とし、イラクに一層の協力を求めた。一方、米国のネグロポンテ大使は、「報告ではイラクが安保理決議に従う姿勢は感じられなかった」と述べた。


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