[原子力産業新聞] 2003年1月30日 第2171号 <1面>

[名古屋高裁金沢支部] 「もんじゅ」設置許可に無効判決

1995年12月のナトリウム漏洩事故により運転を停止している核燃料サイクル開発機構の高速増殖原型炉「もんじゅ」(28万キロワット)の安全性を巡り、周辺住民ら32人が国を相手どり、原子炉設置許可の無効確認を求めた行政訴訟の差し戻し審の控訴審判決が27日、名古屋高裁金沢支部であった。川崎和夫裁判長は、もんじゅの安全審査には欠落があると判断。一審の判決を取り消し、同炉の設置許可は無効とする判決を言い渡した。原子力発電所を巡る訴訟で、住民側の勝訴は初めてのこと。一方国側は、上告を視野に入れて今後の対応を検討していく方針だ。(2面に判決の骨子)

控訴審では、設置許可の前提となる国の安全審査の妥当性について一審と同様に、「二次冷却材漏洩事故」、「蒸気発生器の伝熱管破損事故」「炉心崩壊事故」などを争点に争われた。住民側は、安全審査にはナトリウムと鉄の床ライナが起こす反応などといった重要な知見が欠落していることから、審査は違法などと主張。これに対し国側は、ナトリウムとコンクリートとの接触は床張りの厚さ変更などで防げることなどから、基本的な設計方針は妥当であり、審査の合理性は失われないとしていた。

川崎和夫裁判長は、「原子炉設置許可処分が違法とされるのは、現在の科学技術水準に照らし、安全委もしくは原子炉安全専門審査会の調査審議で用いられた具体的審査基準に不合理な点がある場合、あるいは当該原子炉施設が具体的審査基準に適合するとした安全委もしくは原子炉安全専門審査会の審議および判断の過程に看過しがたい過誤、欠落がある場合」として、(1)漏洩ナトリウムとコンクリートの直接接触が確実に防止出来る保証はない(2)蒸気発生器伝熱管破損事故の解析で、許可申請書では想定されていない高温ラプチャ型破損が発生する可能性を排除出来ない(3)安全審査の「一次系冷却材流量減少時反応度抑制機能喪失事象」における炉心損傷後の最大有効仕事量の判断では、遷移過程における再臨界の際の機械的エネルギーの評価はされていない--として、「原子炉格納容器内の放射性物質の外部環境への放出の具体的危険性を否定することが出来ないというべき」などと判断。原告側の請求を棄却した一審・福井地裁判決を取り消し、国の設置許可を無効とする住民側逆転勝訴とした。

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判決を受け、27日夜に緊急会見を開いた遠山敦子文部科学大臣は、「国の主張が認められず、誠に遺憾。エネルギーの長期安定供給に向けて、高速増殖炉サイクル技術の確立が重要であり、『もんじゅ』は、その高速増殖炉サイクル技術の研究開発の中核となる施設であり、その重要性にはいささかも変わりはない」との談話を発表するとともに、早期の運転再開を目指す姿勢を強調。また、「上告も含め、関係省庁と検討したい」とした。


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