[原子力産業新聞] 2003年1月30日 第2171号 <4面>

[放医研] 次世代PET研究会

放射線医学総合研究所重粒子医科学センター医学物理部・診断システム開発室の村山秀雄室長らのグループはこのほど、PET(ポジトロン断層画像診断装置)用三次元放射線位置検出器の新規開発に成功した。4段階の深さ位置を同定できるこの検出器は、高感度と高分解能の両立を狙う次世代PET開発のキーとなるものと期待される。この検出器を頭部用PET装置に実用化すれば、解像度を従来の5ミリメートルから3ミリメートルに向上、かつ感度を従来の3倍に上げることが可能で、機能画像の解像度を10ミリメートルから5ミリメートル以下に改善できる見通し。脳の活動をリアルタイムに近い形で測定できるようになるという。

PETは、がん診断をはじめとする生体の代謝機能の診断装置として世界的に研究開発が進められているが、感度と分解能を両立させるという本質的な研究については停滞している状況にあり、従来の診断システムでは、PET本来の潜在能力を充分に活かすことができないという問題があった。我が国のPET研究開発は、放医研と全国の大学および浜松ホトニクス、日立化成工業、島津製作所等の民間企業が共同で進めてきたが、今回の高感度・高解像度の両立を実現した放射線位置検出器開発の成功により、次世代PET開発の国際競争において、我が国が一歩先んじたことになる。

今回、開発した三次元放射線検出器は、2.9ミリメートル×2.9ミリメートル×7.5ミリメートルのケイ酸ガドリウム結晶を二行二列に並べて一段を構成。これを基本に4段に重ねたものを一つの結晶ブロックとしている。結晶ブロックのそれぞれの結晶間に65ミクロンの光学反射体を適宜挿入することで、各結晶で吸収される放射線の位置弁別およびエネルギー弁別を精度良く行うことができる。

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放医研が中心となって進めている次世代PET研究会が27日、千葉市の放医研で開かれ(=写真)、次世代PET装置開発にむけた最新の状況が報告され、今後の開発戦略についての意見交換を行った。まず放医研の村山秀雄室長が同装置開発にむけた要素技術の概説を行い、その後に研究会に参加する大学やメーカー等から、それぞれ次世代装置の各要素技術の開発状況が報告された。

このなかで村山室長はキーテクノロジーである新型検出器等の技術要素の概要と今後の可能性を述べ、同検出器の開発などによって、従来のPET装置では両立できなかった感度と解像度の飛躍的な向上が実現できるとの期待を示した。今後、新技術を開発・組み合わせることで、人体頭部の検査を行う次世代PET装置の試験機を3年程度かけて製作する計画という。


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