[原子力産業新聞] 2003年2月6日 第2172号 <3面>

[EC] 欧州共通の安全基準承認

欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会(EC)は1月30日、原子力関連施設における安全確保と放射性廃棄物の処理処分に関して欧州共通の基準となるEU指令案を承認した。これらの提案は今後、欧州原子力共同体(ユーラトム)協定の条項に則ってEUの意志決定機関である欧州議会、欧州理事会が審議した後、EU域内で共通の基本的な安全基準として設定されることになる。ただし、加盟国やECの要請によって改定、もしくは補足される可能性があることも同協定の条項に明記されている。

これらの指令案は昨年11月にECが提案していたもの。原子力施設の廃止措置で基金を確保したり、高レベル放射性廃棄物(HLW)の地層処分を遅くとも2018年までに開始するよう加盟各国に義務付ける内容で、すでにこの分野のEC提案に関して審査を担当する原子力専門家委員会から保証を得たとしている。ECのエネルギー・輸送問題担当委員でもあるL・デパラシオ副委員長は、「現時点ですでにEU域内の原子力安全は高いレベルを維持しているが、EUの拡大に際して法的な不備を是正しておく必要がある」と言明。中・東欧諸国の新規加盟を控え、域内全体で法的な拘束力のある共通の原子力安全基準を保証することの重要性を強調した。今回承認されたEU指令案の概容は次の通り。

原子力施設の設計から廃止措置に至るまでの安全性に関する一般原則と基本的な義務事項を設定する指令=安全性について拡大EU全域で共通の方法と基準の採用を保証する安全基準と確証メカニズムの設置を提案。これらの安全基準はIAEAの基準に基づいて設定されるが、必要に応じて補足基準の設置もあり得る。加盟各国は独立の立場で活動できる安全規制当局を要することになる。安全基準の共通枠組みは、IAEAによって国際的に認知された原則に基づくこととし、法的な拘束力を持つ。

指令によるモニタリングと言ってもここではピア・レビューの原則に基づき各国の安全当局による活動が効果的なものとなるよう確証するのが目的で、施設の安全状態を現地で審査することではない。また、安全確保の保証、特に施設の廃止措置作業では一般大衆や環境を放射線から防護するのに十分な資金が必要との観点から、本指令案では廃止措置基金の設置・管理および活用を操業事業体とは法的に異なる組織に託するという規則を定めている。

放射性廃棄物の管理について適切な期限内に明確かつ透明性のある対応を取るための指令=高レベル廃棄物は深地層に処分するのが現時点では最も安全と考えられるため、加盟各国には事前に定めたスジュールに従って深地層処分を行う国家計画の採択を要求。処理地点は国内あるいは数か国でシェアするかに係わらず、遅くとも2008年までに選定し、遅くとも18年には操業を開始する。低レベル廃棄物については遅くとも13年には処分を実施すべきである。

この指令の最大の狙いは使用済み燃料の管理戦略を加盟各国に採択させることにあり、問題解決のため加盟国同士で協力させることはあり得ても、他国の廃棄物の受け入れを強いるようなことはない。


Copyright (C) 2002 JAPAN ATOMIC INDUSTRIAL FORUM, INC. All rights Reserved.