[原子力産業新聞] 2003年2月6日 第2172号 <3面>

[米・DOE] 議会に答申

米エネルギー省(DOE)は先月、議会から諮問されていた使用済み燃料の先進的な処理技術や変換研究に道筋をつける先進的な核燃料サイクル・イニシアチブ(AFCI)に関する答申報告書を提出した。

この報告書は、2002年のエネルギー・水資源法に付随する議会報告書中の指示に従ってDOEがまとめたもの。議会はDOEが実施している使用済み燃料の分離・変換技術研究活動に関連して、すべての選択肢の比較や必要となる施設の経費など6項目を質問していた。これに対してDOEは、研究開発の現状について「目覚しく知見の集積作業が進展した分野はあるものの、概して非常に初期の段階にあるため意味のある回答を出すのは難しい」と説明。DOEとして提示できるのは現段階で最も適切と考えられる見積もりであり、予備的な回答である点を強調している。

議会はまず、高温化学法や加速器を使った変換方法、高速炉を使った方法の比較について質問。DOEは「概念レベルの比較は可能だ」としながらも、コストなどの詳細は不明であり、第4世代原子炉開発計画の領域に入る変換システムやUREX+法についても「初期の概念段階なので比較は難しい」との見解を示した。

2点目として議会は、必要となるすべての施設について建設から操業、廃止措置、除染までの生涯コストを試算するよう要請。DOEはこれについても「今日現在、提供できるような正確な情報はない」とし、意味のあるコスト試算も今後の大きな研究課題の1つであると説明した。

また、数ある技術に関する核拡散抵抗性の比較については、DOEは「測定基準が存在しない」と指摘。国際社会と協力して核拡散抵抗性を測れる枠組みを開発中だとしながらも、少なくとも1年程度で完成するものではないとの考えを示した。

議会はさらに、再処理・変換のさまざまな代替技術のために必要となる新たな処理・処分施設の立地戦略を質問。DOEとしては、採用する技術が選択され、その環境影響が調査されるまでは答えられないとしている。ただし、地層処分される既存の使用済み燃料の処理に十分な容量を想定した先進的な燃料サイクル施設については、廃棄物管理技術の実行という米国の利益を反映する意図を持つ民間セクターが建設・操業してくれることを期待すると述べた。

すべての比較の基本となるワンス・スルー燃料サイクルを採用した場合に地層処分される使用済み燃料の量に関しては、DOEは「ウラン鉱石並みに放射毒性が減衰するのに約30万年かかる量」と言明。報告書が示唆した研究が成功すれば、先進的な燃料サイクルの採用によって減衰期間は約1000年に短縮できるとの見方を示している。

なお、報告書の中でDOEは、この分野における世界の研究開発では、核拡散抵抗性の高い先進技術が使用済み燃料管理における主要な部分となるよう米国がリーダーシップを取るべきだとの見解を提示。これらの技術によって廃棄物処分コストを大幅に削減できるほか、使用済み燃料に含まれていたプルトニウム在庫量の削減は国家保障の強化につながるなど、その他の利点もあると訴えている。

同報告書はまた、AFCIでは2つの研究要素が平行して実施されているとしており、うち1つは中期的な技術だと指摘。使用済み燃料の成分中96%を占めるウランを抽出して地層処分する分量を削減したり、使用済み燃料中に含まれるプルトニウムの大部分を破壊して拡散リスクを低減する技術などを例に挙げた。DOEによれば、これらの技術は既存の原子力の枠組の中で開発できるほか、米国で稼動する既存の、あるいは将来の軽水炉でも利用が可能だとしている。

もう1つは長期的な技術で、特に処分場に送る高レベル廃棄物の長期的な熱負荷と放射毒性を急速に減じる技術だとDOEは指摘。これらの技術の実用化には第4世代原子力システムの成功が不可欠であるため、長期的なオプションと考えられるとしており、うまくいけば処分場内の廃棄物の毒性は約1000年で天然ウラン鉱石と同程度にすることができるとしている。


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