[原子力産業新聞] 2003年2月13日 第2173号 <4面>

[紹介] アジア原子力協力フォーラム(FNCA)とアジアの原子力利用(1)

 アジア諸国との原子力分野の協力を進めるため、原子力委員会は1999年3月、「アジア原子力協力フォーラム(FNCA)」を設立した。FNCAには、日本、オーストラリア、中国、インドネシア、韓国、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムの九か国が参加、研究炉利用、ラジオアイソトープ(RI)・放射線の産業・農業利用、原子力広報C放射性廃棄物管理、原子力安全文化、人材養成で協力、ワークショップ等を通じ情報交換を行っている。本紙では月一回程度、FNCAの諸活動とアジア地域の原子力利用を紹介する。

 FNCAの重要プロジェクトの一つに核医学診断に不可欠な「テクネチウム(Tc)ジェネレータの開発」があり、一月にインドネシアでワークショップが開かれた。Tcジェネレータは、正確な画像診断のできる核医学検査には欠かせない放射性医薬品である。

 このプロジェクトには二つの重要なねらいがある。

 一つは、途上国の研究炉を利用して、天然のモリブデン(Mo)から作ったMo99が利用できる(n−γ法)ことである。

 第二には、従来のウランの核分裂を利用して製造する方法(n−f法)では、濃縮ウランが原料として必要で、モリブデンを取り出したあとに高レベル廃棄物が発生し、また核不拡散上も好ましくなく、コストも高いため、n−γ法に置き換える必要がある。

 モリブデンの優れた吸着剤ポリジルコニウム化合物(PZC)が化研と原研で開発されたことがn−γ法の利用を可能にした。PZCはnf法の場合に用いられているアルミナの数千倍もの吸着能があり、コストも妥当なものである。

 FNCAでは、インドネシア、日本、ベトナムを中心とし、八か国の協力でPZCを用いた工業用技術の確立に取組んでおり、半年後には最初のプロトタイプの製造装置がインドネシアに設置される計画である。この技術が完成すれば、現在、Tcジェネレータを輸入している多数の途上国が、自国の研究炉を用いて国産化することが可能になる、画期的なプロジェクトである。 (町末男・原産常務理事)


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