[原子力産業新聞] 2003年2月20日 第2174号 <1面>

[IAEA] 国連安保理に付託

国際原子力機関(IAEA)理事会は、12日、北朝鮮が引き続き核不拡散条約(NPT)と保障措置協定に「更なる違反」をしているとして、国連安全保障理事会に付託することを決めた。これは、IAEA憲章12条C項にもとづく措置。北朝鮮核問題での安保理付託は、1993年4月に続き二度目となる。

同理事会でエルバラダイ事務局長は、「北朝鮮は1993年以来、長期にわたり保障措置協定に従ってこなかった」とし、北朝鮮が1993年6月以来NPT脱退を一時停止した「特殊な地位にある」との主張は、「IAEA理事会と総会がともに退け、保障措置協定は有効と宣言している」と述べた。

昨年秋以来の北朝鮮による保障措置用封印の撤去、監視用カメラの妨害、査察官の国外退去など一連の措置の結果、IAEAは保障措置協定に定められた義務を果たせなくなったとし、北朝鮮の行為は協定への「更なる違反」とした。同事務局長は、これが「危険な前例」となりかねないと警告した。

理事会は、北朝鮮の保障措置協定違反と、IAEAが北朝鮮での核物質の平和利用を検証できない旨、安保理、国連総会、IAEA全加盟国に通告するとしたが、同時に北朝鮮の核問題を平和裏に解決することを望むと述べ、外交交渉による解決を支持している。

エルバラダイ事務局長は理事会後の記者会見で、安保理への付託は「IAEAがこの件から手を洗ったことを意味するわけではなく、今後も北朝鮮に働きかけを続ける」とし、安保理に場を移し外交交渉を続けると述べた。また、保障措置協定への違反は、「相手がイラクであろうと北朝鮮であろうと、国際社会が一切妥協しないという、同一の方法で対処しなければならない」と述べた。

北朝鮮核問題の安保理付託について、外務省の高島外務報道官は、北朝鮮がこれを重く受け止め、IAEAとの対話を再開し、早急かつ検証可能な形で核兵器開発計画を撤廃するよう談話を発表した。一方、韓国政府は「当然の措置」と評価、安保理が外交的解決を促しつつこの問題を扱うことを期待するとした。

北朝鮮政府はまだ公式の反応を見せていないが、北朝鮮外務省スポークスマンは5日、「安保理が朝鮮半島の核問題を論議しようとしまいと意に介さない」と述べ、「安保理付託は宣戦布告」としていた以前より、落ち着いた反応を示している。


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