[原子力産業新聞] 2003年2月20日 第2174号 <1面>

[国連安保理] イラク査察問題の対応割れる

国連安全保障理事会は14日、閣僚級会合を開き、エルバラダイIAEA事務局長とブリックス国連監視検証査察委員会(UNMOVIC)委員長から、イラク査察の最新報告を聞いた。その後の議論で、査察継続を求める仏等と、より強硬な姿勢を示す米国等との対応が割れた。

ブリックス委員長は、「11週間査察を続けたが、大量破壊兵器が存在する、信頼に足る証拠は見つかっていない」としつつも、「イラクが所有を禁止されている多くの兵器や原料等が行方不明になっており、これらがいまだに存在する可能性は捨てきれない」と述べ、査察継続を訴えた。

エルバラダイ事務局長は、イラクによるウラン密輸の試みについて、新たな情報を入手、更に調査の必要があると述べた。また、ウラン濃縮機にも使える高張力アルミニウム管をイラクが輸入しようとした疑惑や、核兵器起爆剤にも使える高性能爆薬HMXの行方、イラク人科学者の自宅から発見されたレーザー濃縮に関する二千nもの資料なども、続けて調査する必要があると述べた。

ブリックス委員長は、イラク側の協力姿勢について良好だがより積極的な協力が必要とし、U2偵察機による査察が近く始まることからも、「査察を通じた武装解除に、3か月間は短すぎる」と述べ、イラクの一層の協力を得つつ査察継続が重要と強調した。

両氏報告後の外相による議論では、仏、中国、ロシアなどから、イラクの一層の協力を得て査察を継続し、事態を平和裏に解決すべきとの意見が出され、ドイツをはじめ非常任理事国の多数からも強い支持を得た。一方、「イラクは引き続き欺き、否定している」と主張する米国は、英国や非常任理事国のスペイン、ブルガリアの支持を得たが、少数派にとどまっている。


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