[原子力産業新聞] 2003年2月27日 第2175号 <3面>

[独原産] EU指令案に反対

ドイツ原子力産業会議(DAtF)のG・マイヒェル理事長は今月初旬にベルリンで開かれた冬季年次会議の席で、欧州委員会(EC)が提案している欧州連合(EU)域内共通の原子力安全基準や放射性廃棄物管理手続きに関する指令案はユーラトム協定の権限の範囲を超えており、加盟各国の権限を侵害すると発言。導入に反対する姿勢を明らかにした。

この指令案はECが1月30日に採択したもので、原子力関連施設の廃止措置基金を外部に確保し、高レベル放射性廃棄物(HLW)については地層処分を遅くとも2018年には開始するよう加盟各国に義務付ける内容。マイヒェル理事長はまず、指令案が打ち出しているような最小限の共通安全基準で原子力発電全般の安全性が向上するとの見方を一蹴。ドイツの原子力施設が既に高いレベルの安全性を維持しているのに対し、共通基準の導入によってEUへの新規加盟候補国への配慮から安全レベルが低下する危険性さえあるとの認識を表明した。その上にECからさらなる監督および実施権限が導入されれば、これまで明確だった加盟各国の責任の所在は不明瞭になると指摘。放射性廃棄物管理や発電所廃止措置のための既存の準備金を外部基金に委託するという点についても、「域内における廃棄物管理義務が調整の取れたものでない限り、国内の厳しい法的な要求事項により多額の準備金を蓄えているドイツの原子力発電会社が不利益を被ることになる」との考えを示した。

マイヒェル理事長の認識では、将来の処分場建設のための投資コスト負担はどのような形式の基金よりも優れており、指令案で示されているような外部基金によって財政面が万全に保障されるわけではない。

同理事長はまた、ドイツの反原子力政権に対しては、産業界が許容できるようなエネ政策の概念が必要だと訴えており、ドイツの原子力産業界が同政権との政治的な妥協策である段階的な脱原子力政策に忠実に従っている点を強調。ただし、古い原子炉を閉鎖していくにつれ必要になる代替電源への投資については、全体的な対応の枠組みを早急に確立する必要があると指摘している。


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