[原子力産業新聞] 2003年2月27日 第2175号 <4面>

[島津製作所] 新型X線CTを開発

島津製作所は、クリーンな国産エネルギーとして活用が期待されているメタンハイドレートの断層像を得るための「温度制御X線CT複合システム」(Cryo|X=写真)を開発した。これは、経済産業省が進めるメタンハイドレート資源開発プロジェクトの生産手法開発を担当する産業技術総合研究所との共同開発によるもので、メタンハイドレートからのメタンガス生産シミュレーション構築に寄与できる。

「メタンハイドレート」は、日本国内でも七.四兆立方メートルが埋蔵されており、これは、一九九九年度国内の天然ガス消費量の約百年分に相当する。

開発した「Cryo|X」は、産業用X線CTに温度制御装置を付加した複合システム。メタンハイドレートを格納した圧力容器に冷却ガスまたは加熱ガスを吹き付けて温度制御を行いつつ、メタンハイドレートが融解する過程やその逆過程をマイクロフォーカスX線CTで観察、多成分系ハイドレートの生成分離過程と反応速度に関する研究に役立つデータを得ることができる。最小空間分解能四マイクロ・メートルのマイクロフォーカスX線管と、超高速三次元CT処理システムにより、高解像度画像を短時間で得ることができ、超微細な内部の検査をすることが可能になった。従来の二次元CTでは五十分以上かかっていたCT計算を、六分四十秒に短縮できる。また、試料に冷却ガス又は加熱ガスを吹き付けて、マイナス百度〜百度の温度制御をして試料観察が行えるため、さまざまな条件下での断層像を得られるという。

同社では既に2000年、東大生産技術研究所と共同で応力制御X線CT複合システムを開発。今回の温度制御装置複合システムの開発により、今後は温度と応力の両方を変化させた状態でのCT撮像が可能な装置の開発も射程範囲内となり、さまざま環境条件に適合できる新材料・新素材の開発に貢献していきたいとしている。


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