[原子力産業新聞] 2003年3月6日 第2176号 <4面>

[CIA] 「大量破壊兵器拡散の現状」報告書より

米中央情報局(CIA)は1月、米議会に「大量破壊兵器および高度通常兵器獲得に関する公開報告書」を送付した。これは、2001年7月から12月におけるイラン、イラク、北朝鮮、リビア、シリア、スーダン、インド、パキスタンの八か国のこれら兵器の獲得状況と、これらの国に対する供給国の現状を報告したもの。本号では同報告書より、最近注目を集めているイラン、イラク、北朝鮮の状況と、供給国の現状をお伝えする。

イラン、イラク、北朝鮮進む核技術の拡散 イラン

イランは核兵器、化学兵器、生物兵器といった大量破壊兵器の製造および運搬システム、最新通常兵器の国産化計画を精力的に進めている。そのためにイランは、外国から物資や訓練、機器および技術的ノウハウを取り入れようとしているが、同国はこれまでも、そのように外国から得たものによって、自国が持つ運搬システムや他兵器の部品を補い、いくつかの完全な兵器システムを作り上げてきたのである。本報告書の対象期間内において、同国は特にロシア、中国、北朝鮮および欧州の企業・組織に注目していた。

米国は、イランが核不拡散条約(NPT)に調印しているにもかかわらず、核兵器製造計画を進めていると確信している。国内の核燃料サイクル能力を確立するために、イランは外国から様々な核物質および技術を取得しようとしてきた。しかし、このような能力は、同国の核兵器計画用の核物質の製造にも利用できる。

ブシェール原子力発電所はIAEAの保障措置の下に置かれているものの、イランはロシアからの専門知識と製造技術援助によって、原子力のインフラを整備することができた。これは、同国の核兵器研究開発計画に直接的な恩恵をもたらす可能性がある。さらに、ロシアの企業と組織は核燃料サイクルの研究活動のために、イランの複数の研究所と交流を続けている。

イランは、ごく小規模の民生用原子力計画を有しているが、これを、様々な核燃料サイクル能力を自力で確立、あるいは外部から取得しようとする活動を正当化するために利用してきた。しかし、このような技術能力は、核兵器計画のための核物質の製造を支えるためにも使用できる。我々は、このような施設の建設にイランが非常に熱心である理由はまさにこのことにあると確信している。たとえば同国は、ウラン転換施設(UCF)のように、表向きはブシェール原子力発電所で使用する燃料生産をサポートするために使う施設を、ターンキー方式で建設させようとしてきた。しかしUCFは、いろいろな形で、核兵器に必要な核物質の製造を支援するために利用できる。具体的には、ウラン濃縮のための供給源として使用するための六フッ化ウランの製造や、プルトニウム製造炉で燃料として使用するのに適したウラン化合物の製造である。さらに、イランはその核兵器計画の一環として、外国から核物質および技術を取得しようと考えているのではないかと我々は推測している。

イラク

イラク政府は1998年12月以来、国連安全保障理事会決議687および追加の決議によって義務付けられている国連の査察官の受け入れを拒否している。この報告書の対象期間中には、国連による査察は行なわれていない。また、国連はイラク国内にある、存在がわかっておりかつ疑惑を持たれている大量破壊兵器製造施設に、自動録画モニタリング・システムを設置したが、これらは作動していない。さらに、イラクは隠蔽工作に多大な努力を払っており、おそらく、査察を拒否してからの期間を禁止された計画の再構築にあてていたと思われる。国連から強制的に派遣される査察官がイラクにいなければ、同国の大量破壊兵器とミサイル計画の現状を評価することは困難である。

フセインは何度も、自国の「原子力のムジャヒディン(イスラム聖戦士)」に対し、「敵を倒す」よう繰り返し激励しているが、このことは、湾岸戦争以来、イラクが核兵器研究開発を継続してきているのではないかという我々の懸念を一層強めるものである。同国にとって、核兵器を製造する上での最も大きな障害は、十分な量の核物質が入手できないことにある。情報関係者は、同国が核兵器計画を再構築するための物資を取得しようとしているのではないかとの懸念を抱いている。

北朝鮮

本報告書の対象期間中、北朝鮮は継続的に、核開発計画に応用できる技術を世界中から調達しようとしていた。同国は、ウラン濃縮計画を進めるために、遠心法に関連する物資を大量に求めている。同国はまた、ウランの注入および取り出しシステムでの使用に適した機器をすでに入手した。

北朝鮮はおそらく、少なくとも一個、可能性としては二個の核兵器を製造するのに十分な量のプルトニウムをすでに生産したと思われる。1994年の枠組み合意に従って密封された使用済み燃料棒には、さらに数個の核兵器を作るのに十分な量のプルトニウムが含まれている。

北朝鮮はまた、弾道ミサイル計画に必要な原材料や部品を、特に中国に拠点を置く北朝鮮の企業を通じて、様々な国々から調達し続けている。同国は現在、ミサイル発射実験の自主的凍結(モラトリアム)を継続しており、これを少なくとも二〇〇三年までは維持するとしている。

2001年4月に、北朝鮮はロシアとの間に「国防産業軍事技術協力協定」を締結し、北朝鮮への兵器の販売および輸入の可能性へ向けて、下地を作った。兵器の販売および搬入は、北朝鮮に支払能力があるかどうかにかかっている。

主要供給国の現状 ロシア

ロシアの防衛、バイオテクノロジー、化学、航空宇宙学、および原子力産業界はすべて資金難にあえいでおり、輸出や技術移転によって資金を得ることに躍起である。さらに、同国の大学や科学研究所の中には、外国人留学生に大量破壊兵器やミサイルに関連する教育や訓練を供与することによって、なんとしても必要な資金を稼ごうとしているところもある。このような技術の輸出や、技術移転、訓練が核拡散に与えうる影響の大きさを考慮すれば、ロシアの特定の組織の動きや、同国政府の核不拡散体制の全体的な効果に対し、監視することが今後とも非常に重要である。

ロシアはイランの民生用原子力計画、特にブシェール原子力発電所建設において、最も重要な役割を果たしてきた。ロシアの援助の表向きの目的は民生用に利用する原子力関連インフラ整備であるものの、このような協力がイランの核兵器開発の推進を後押ししているというのが、我々の見解である。情報関係者は、ロシアのイランに対する原子力分野の協力に関し、直接的に核兵器開発を助けるような援助については、厳しく監視を行なっている。

プーチン大統領は2000年5月に原子力関連の輸出に関する大統領令を修正し、ロシアが、IAEAのフルスコープ・セーフガードを受け入れていない国家に対しても、例外的なケースであれば、核物質、原子力技術および機器を輸出することを認めるとした。たとえば、ロシアは2001年にインドに対し、民生用原子力計画のために物資を提供している。

ロシアは、インドと中国の海軍の原子力艦船画に対する技術および機器の主要な供給源であり続けている。さらにロシアはインドとの間で、原子力攻撃潜水艦を貸し出す可能性を話し合った。

北朝鮮

2001年後半の六か月間、北朝鮮は大量の弾道弾ミサイル関連機器、部品、物資および専門技術を、中東、南アジア、北アフリカに輸出し続けた。北朝鮮は弾道ミサイル、機器、関連技術の開発と輸出を、重要性の非常に高いものと位置付けている。弾道ミサイルおよび関連技術の輸出は、北朝鮮にとって主要な外貨源であり、同国はその資金によりさらにミサイルの開発および製造を行う。

中国

本報告書対象期間中、中国は米国とかわした二国間核不拡散約束を、引き続き狭義に解釈している。原子力分野において中国は、米国との二国間合意で、どのような国に対しても核兵器の取得および開発のための援助は行なわないとし、NPTを超える内容の約束をしている。たとえば、1996年5月に中国は、保障措置の対象となっていない原子力施設に対する援助は行なわないと宣言している。しかし、この宣言以後も、中国の企業・組織が、おそらく北京の中央政府に知られることなく、許可も受けずに、パキスタンの核兵器計画に関係する組織と接触し続けている可能性は否定できない。

1997年十月に、中国は米国に対し、イランへの原子力協力に関し、問題がないことを保証した。中国はイランに対し、ウラン転換施設(UCF)提供に関連する協力の打ち切りと、既存の二つのプロジェクトの終了後は、新たな協力は行なわないとの内容で合意した。しかし、中国政府が米国と二国間の約束をしているものの、中国とイランの企業・組織の間では何らかの交流が行なわれているのではないかと、我々は懸念している

2000年11月に、中国は核兵器の搭載使用可能な弾道ミサイルの開発に関し、どのような国家に対しても、どのような形でも援助は行わないと同時に、包括的なミサイル関連輸出規制制度を早期に発効させることを約束した。しかし、本報告書対象期間中、中国の企業・組織はパキスタンに対し、ミサイル関連技術援助を行なった。パキスタンはこのような中国の援助を受けて、固体燃料SRBMの国内での一貫した連続製造に向けて前進している。パキスタンはまた、二段式シャヒーンU・MRBMの開発のために、中国の援助を引き続き必要としている。さらに、中国の企業は、イラン、北朝鮮、リビヤといった核拡散が懸念される国々に対しても、デュアル・ユースのミサイル関連物資、原材料、および援助を提供している。

最近の拡散の傾向、高まる兵器の自給率

主要な大量破壊兵器およびミサイル計画は、これらがより成熟し、懸念される国家群が一連の技術取得に積極的になるにつれ、より改良され、効果的になってきている。

大量破壊兵器の主な拡散国は、兵器の自給率を高めている。これらの国々は核兵器計画を、介入による阻止や強制的中止から、より巧妙に守るようになっている。この意味で、拡散国は、より改良された製造技術も含めて、国産の技術力の強化を求め続けている。このような国産の製造力は、必ずしも外国からの輸入代替物として優れているとは限らないが、多くの場合、適当なレベルには達しているようである。

さらに、多くの大量破壊兵器およびミサイル拡散国は、取引の隠蔽や、デュアル・ユース技術の利用、および自国内での開発に地下施設を使用するなど、兵器開発を否定したり隠蔽することに、より巧妙になってきている。たとえば、こういった国々は、大量破壊兵器にも利用できるデュアル・ユースの物質や技術を、商業用原子力施設で使うという合法的な使用目的のために取り入れようとしているが、これらは比較的短い時間で大量破壊兵器への使用目的に転換することができる。経済的な圧力の下、容易に多額の利益を上げられる輸出の需要の存在は、特にデュアル・ユース機器や技術の場合、供給側の企業、組織にとって強い動機である。ロシアや中国といった国で輸出規制の取締りがゆるい場合、このような傾向が助長されている。さらに、これまで大量破壊兵器やミサイル技術の被供与国であった国々、特に国家財政による軍事計画が成熟してきた国々は、他の拡散国に対し、これらの技術や専門知識を提供し始めている。インド、イラン、北朝鮮、パキスタンなど、このような「二次的拡散国」は、核供給グループ、オーストラリア・グループ、ミサイル技術管理体制といった国際管理体制には属しておらず、これらの輸出制限にも従っていない。

核兵器、化学兵器、生物兵器および弾道ミサイルに応用可能な技術と専門知識は、じわじわと世界中に広がり続けている。核燃料サイクルと核兵器関連技術の広がりは、技術的な観点からすると、さらなる拡散国が核兵器製造に十分な核物質を製造し、それを兵器化する技術開発が可能なところまで来ている。しかしその一方で、ほとんどの国で、核兵器開発を阻止するための重要な政治的な力も作用し続けている。開発途上国が殺虫剤を生産するために化学工業を拡大すれば、それは同時に、少なくとも、化学戦争を戦う潜在能力の獲得に向けて前進することを意味する。同様に、国家に縛られない活動家達は、生物兵器を、比較的安価に、重大な被害を引き起こしうる方法として、興味を持ち始めている。大幅に改良された弾道ミサイルの設計、技術の拡散は、地域の安定性がより多大な危険性にさらされるという意味で、懸念すべき国の数が増大する脅威をもたらす。

最後に、拡散が憂慮される国々の多くは、高性能通常兵器の設計を国内で行い、かつ製造能力を拡大使用としている。とはいうものの、これらの推進計画のほとんどは大抵の場合、外国からの技術援助に大きく依存している。こういった、最新の高度な兵器を入手することができない国々の多くは、既存の備蓄兵器の改良計画を推し進めている。さらに、被援助国の中には、イランのように、他で兵器を購入することができない国や団体のために、今度は自分が供給者になっている国もある。


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