[原子力産業新聞] 2003年3月27日 第2179号 <2面>

[原子力安全・保安院] 柏崎市で住民説明会開く

 原子力安全・保安院は21日、柏崎市で東京電力の不正問題を受けた規制当局としての対応を説明する会を開いた(=写真)。原子力発電所の立地地元の住民に対して直接説明するのは初めてのこと。

 説明会は二部構成で進められ、科学ジャーナリストの中村浩美氏がコーディネータをつとめ、前半に保安院の説明、後半で会場からの質問・意見を受けた。会場には地元住民、報道機関など約430名がつめかけた。

 佐々木宜彦・保安院長は一連の不正問題について「原子力の安全規制行政への信頼を損ねたことを立地地域の皆さんと国民におわびしたい」とし、保安院の体制強化等に取り組むことを説明。続いて各担当官が、再発防止への規制当局としての取り組み、東京電力の再発防止に対する保安院の評価。また、炉心シュラウドなどひび割れのみつかった設備の健全性に関する評価について説明。健全性評価に関して五年後までを視野に入れた健全性評価を行い、「ただちに補修を要しない」との結果を示した。原子炉再循環配管にみつかったひび割れについては、一部にひび割れの深さを測定したデータに差異がみられたため、改善された検査方法の信頼性を実証する必要があり、それまでに運転を再開するために補修等を行う場合は、ひび割れのみつかった部品の交換等を行うように事業者を指導することを説明した。

 後半の質疑では、開催の趣旨について佐々木院長が健全性評価の中間とりまとめなど説明を行ううえでのひと区切りついた状況を受け、「できるだけ早く説明の機会を作り、説明責任を果たしたいと考えた」とした。会場からは「健全性評価は事実上の安全宣言か」と運転再開への姿勢をただす声に、保安院は「プラントのトータルな安全宣言でない」とした。

 原子力に否定的な一部住民からは「記録の確認だけでは無意味では」「東電の隠ぺいを発見できなかったのに、安全とか健全だというのは納得できない」「まず保安院を評価することが必要ではないのか」などの厳しい発言が相次いだ。また再循環系配管など重要な機器の点検は運転再開の前にノズル部等すべての箇所で点検すべきとの要望が出されたが、保安院は再循環系配管は重要機器であるため、「今後五年間で100パーセント調べる」考えを示し、今後、機器の重要度に応じて適切に検査、監視を行っていく姿勢を示した。さらに「今回の説明会のみでは不十分」と、改めて開催すべきとの要望が出されたことについて佐々木院長は、開催のあり方を含めて検討するとし、質問を文書で受け付けるなどの見解を示した。

 このほか、地元に密着した検査体制への要望や維持基準の国内外の動向に関する質問などが相次ぎ、説明会は終了予定時間を大きく超えて行われた。(関連記事を4、5面に掲載)


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