[原子力産業新聞] 2003年3月27日 第2179号 <3面>

[欧州委員会] EU内のエネ意識調査公表

 欧州連合 (EU)の行政執行機関である欧州委員会(EC)は6日、EU域内におけるエネルギーに関する意識調査の結果を公表し、原子力については利用の程度や地球温暖化防止に対する貢献度など事実関係の認識レベルが低いとの実態を明らかにした。

 「エネルギー、その課題と選択肢および関連技術」と題されたこの意識調査はエネルギー問題に係わる科学的、技術的な側面のほか将来像などについて域内住民の認識を明確に把握するため、昨年2月から4月までの期間にECの研究総局の委託で欧州意識研究グループが実施。EUの加盟15か国を対象に1か国あたり15歳以上の国民平均千名、域内全体で合計1万6032名にインタビューしたもので、報道・コミュニケーション局の管理・運営により昨年末に報告書にまとめられていた。

 同報告書はまず最初に、欧州域内での「エネルギー問題に関する一般認識」について分析。それによると、域内住民によるエネルギー消費の全体構造の認識は概して曖昧で、特に輸送用のエネルギー消費量を過小評価。10人中9人(88%)近くが地球温暖化による気候変動を早急な対応を必要とする深刻な問題と受けとめているが、その認識の程度や対応については個人個人の教育程度や社会的なバックグラウンドが決定的な役割を担っていることが判明した。

 平均的に見て、回答者達はさまざまなエネルギー源がどの程度使われているかについて概ね実状通りの認識を示していたが、原子力については例外。32%が現実よりも多く使われていると感じていたことが分かっている。また、75%の人は地球温暖化の原因が主に化石燃料であることを知っていたが、47%は原子力も同様に温暖化の原因になっていると回答。これと反対意見の持ち主は27%に留まっていた。

 次に「エネルギー情報」に関する分析では、域内のほとんどの住民が省エネや代替エネルギーなど具体的な問題についての情報を欲しているとの結果が出た。より多くのことを知りたいと考えている項目を複数回答で選択させた設問では、「家庭内における省エネ対策」が53%だったのを筆頭に、「家庭内で新しいエネルギー源を活用する方法」(42%)、「石油やディーゼルに代わるエネルギー源」(39%)が挙がった後、「原子力発電所の安全性について」が36%で続いている。

 「将来認識」に関する分析では、域内の多くの住民がEUのエネルギーが輸入依存状態にあることに危機感を抱いており、新たなエネ源の研究や省エネ政策に活路を見出したいと考えていることが判明。最優先事項は低価格で環境を守ることであり、この点で大多数回答者が再生可能エネルギーを最も有望だと認識していた。核融合研究に関しては、域内住民の59%が「利用の可能性を確認できるよう一層多くの研究が必要」としているものの、一般市民が理解するにはまだ難しい問題だとの認識が明確に示された。安全問題については、先ず第一に原子力発電所で対策が講じられるよう多大な要求が寄せられている。以下、食物の安全性、労働上の安全、産業施設での安全性、などの順で懸念を抱いていることが明らかになった。

 なお報告書は、逆説的な点として、EU域内の住民は生涯コストが最小で人々への悪影響や物質的な損害も最も少ない原子力発電所に対して一層多くの安全対策を要求する一方、それよりも実質的な損害が大きい交通事故にはほとんど対応策を求めていないとの事実を指摘している。

 価格や効率などの観点で50年後に最良と思われるエネルギー源を問いた設問では、価格の点で再生可能エネを挙げた回答者が最も多かったが、教育程度が上がるに従って核融合の割合も増加。効率という点でも「確証は持てない」としながらも再生可能エネが27%と最も高率。核融合は22%で第2位に着けており、以下、天然ガス(20%)、水力(17%)、核分裂(17%)の順だった。

 エネルギー関連研究で今後力を入れて行くべき分野としては、「再生可能エネの開発」(69%)と「クリーンな輸送手段」(51%)で域内住民の見解は二分。「核融合」はこの後に21%で続いていた。


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