[原子力産業新聞] 2003年3月27日 第2179号 <5面>

[原子力安全・保安院] 柏崎住民説明会の質疑から

 2面所報の通り、原子力安全・保安院は21日、柏崎市で初の住民説明会を開いた。規制当局として直接、立地地域の住民と対話するのは初めてのこと。説明会での質疑から、寄せられた質問や意見の主なものと、それに対する保安院の見解を紹介する。

◆開催の趣旨について

保安院 規制当局の考え方をできるだけ早く説明し、説明責任をはたしたいと考えた。運転再開の関係は、各号機の状況が異なる。規制当局としてはきちんとステップを踏んで確認していく事項が残っており、何をどこまで規制当局が行ってきたのか、そこを説明したいと考えた。

◆地元での規制監督庁の出先機関は現状でよいのか。

保安院 あらゆる事業者検査の立会いは難しいが、今後、検査官事務所等で、誰が責任をもって行っているのか等の体制も含め、抜き打ち的な手法もとって確認することにしている。

◆東電の再発防止策について

保安院 事業者に求めているのは、安全を最優先する体制の構築だ。品質保証の体制を整備するということで、国の要求事項に応じたマニュアルや規則の整備など事業者の体制構築が前提だ。そのうえで国が検査により再発防止等の確認を行うことになる。

◆維持基準について

保安院 従来、自主点検等で基準に適合しているかどうか、事業者が判断する際にあいまいなところがあった。法改正で事業者の自主点検を法定化して記録保存の義務化など行ったが、それは透明性の高いルールで行われるようにするためで、今後必要となる維持基準(どの時点で補修等が必要なのかの基準)を作ることも公開審議を通じ透明性の高いプロセスで検討する。

◆維持基準導入の海外での状況について

保安院 一九七〇年代に米国機械学会が検討、同国で導入され、欧州でも導入されている。国内でも日本機械学会が検討し2000年5月に規格(2000年版)をまとめた。わが国も法改正で健全性評価を義務付けることとしており、こうした規格の活用を考えていく。

◆ひび割れの影響−地震は考慮しているか

保安院 炉心シュラウドのひび割れについて、健全性の評価の際に、耐震設計時の地震データを使い、どれだけの力が働くのかを評価し問題ないことを確認した。

◆健全性評価−五年先までの評価した意味とは

保安院 評価にあたり、合理的な範囲(時間的に)でひびの進み具合をみたということだ。五年間は大丈夫というのがひとつの結果として得られたもので、十分に保守的な解析の結果だが、今後の進展状況は適切に監視していく。

◆ひび割れの影響−地元の感情として

 住民から 地元住民としては、ひび割れにより漏洩が発生して起こる被害のほうが心配だ。初期段階のひび割れでも許しがたい。

◆保安院のあり方−独立性の問題

保安院 国会で再発防止の法案を審議するなかでも議論があった。経済産業省内にあっても規制は規制としての立場を貫く姿勢だ。そうした姿勢を理解してもらうためには、独立した規制当局としてのきちんとした対応を積み上げていくことで示す以外にはない。信頼回復にむけて、われわれの判断と行為を積極的に公開し透明性を高める努力をしたい。

◆再発防止にむけて−経済性の重視などの考え方が根本にあるのでは

保安院 潜在的な危険をもつものを、どう管理し危険をコントロールするかという認識で規制行政を行っている。規制庁として当然、安全を最優先している。結果として、安全最優先があって会社(事業者)も成り立つと考える。


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