[原子力産業新聞] 2003年4月3日 第2180号 <3面>

[米環境保護局] NOX削減で「原子力に移行」

 米国の環境保護局(EPA)は3月18日、連邦政府の大気浄化法による要求事項をクリアする手段として一部の発電事業者が化石燃料発電から原子力発電に移行しつつあるとの報告書を公表した。

 この報告書は、都市スモッグ(地表の悪性オゾン)の前駆物質となる窒素酸化物(NOx)の排出量削減対策について調査しているEPAと「オゾン移動委員会」(OTC)が九九年から2002年までの経過報告としてまとめたもの。EPAとOTCは地表オゾンの量が増加する毎年5月から9月までの期間に、OTC対象地域(北東部から太平洋側中部の人口が密集する十二州およびワシントンDC)でのNOx排出量が大気浄化基準を満たしているかどうかを分析している。

 今回の暫定分析報告書によると、2002年実績でOTC地域におけるNOx排出設備からの排出量は90年レベルから60%、すなわち約28万トン低下した。原子力発電に関しては、九七年と九八年に小売販売電力の28%を占めたほか、2000年と2001年には平均35%に増加していたと指摘。「季節的なオゾン量の増加を抑えるためにOTC対象地域外からNOx排出電源による電力がもたらされたのかもしれない」という一部の疑念とは裏腹に、「実質的に原子力発電量が増加していることから見ても、化石燃料発電から原子力に移行したと考える方が妥当」との認識を示している。

 同報告書としてはこれらのデータは、酸性雨対策計画の対象である化石燃料発電量の低下と小売販売電力量の増加がOTC対照地域における原子力発電量の拡大によって十二分に補われていることの証明だと強調。OTC計画に参加する一部の電力会社については対象地域外から化石燃料による電力を購入したことを認める一方で、「対象地域で化石燃料の小売販売量が3%低下していたという事実は必ずしも対象地域外の電源にシフトしたためとは言えない」と言明した。


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