[原子力産業新聞] 2003年4月10日 第2181号 <6面>

[経済産業省・資源エネ庁] 電力供給計画の概要

 一部既報。経済産業省・資源エネルギー庁は3月31日、電力十社と卸売り電気事業者3社の、2003年度電力供給計画をとりまとめ発表した。2003〜2012年度までを対象とした同計画は、長引く不況や省エネ効果などを反映し、需要電力量・最大電力需要ともに、昨年度に出された供給計画を下回る予想をしている。今号では、今年度供給計画の概要を報告する。

1 電力需要想定(一般電気事業者の電源対応需要)

 今回の供給計画の前提となった2012年度までの需要電力量、最大需要電力および燃負荷率の見通しは、次の通りである。(表1、2)

(1) 2002年度推定実績および2003年度見通し

@ 需要電力量

 2002年度の需要電力量は、外需を中心とした緩やかな景気回復により、民生用需要、産業用需要ともに概ねプラスののびとなることから8325億キロワット時、対前年度増加率1.0%増(気温補正後0.8%増)と、2年ぶりにプラスの伸びとなる見込みである。

(略)

 2003年度の需要電力量は、景気回復が緩やかなものにとどまることなどから、8327億キロワット時、対前年度比0.0%増(気温、閏補正後0.5%増)と2002年度を下回る低い伸びとなる見込みである。

(略)

@ 最大需要電力

 

 01年度を下回り、その影響で冷房需要が減少したため、1億7392万キロワットと01年度に対し、0.6%減(気温補正後0.2%増)となった。

 03年度の最大需要電力は、景気回復がきわめて穏やかなことに加え、前年の高気温の反動から、1億7233万キロワットとなり、02年度に対し、0.9%減(気温補正後0.8%増)と2年連続して前年の水準を下回る見込みである。

(1) 長期見通し

 

 需要電力量

 今後の需要電力量については、内需を中心とした安定的な経済成長、経済社会の高度化、アメニティ志向の高まり、高齢化の進展及び電気の持つ利便性などに起因する電力化率の上昇などが押し上げ要因となる一方で、足元での景気回復の遅れ、省エネの一層の進展などにより、過去に比べて増勢の鈍化が予想される。

(略)

 

結果、特定規模需要以外の需要と特定規模需要を合計した需要電力量は、産業用関連需要が伸び悩むものの、電灯、業務用電力等の民生用需要の比較的安定した増加により、01年度の8241億キロワット時から、2007年度には8808億キロワット時、2012年度には9463億キロワット時となり、01年度から12年度までの年平均増加率は、同期間の経済成長率をやや下回る1.3%増(気温補正後も1.3%増)となる見込みである。

@最大需要電力

 最大需要電力(夏期におけるピーク電力)は、これまで主に電灯、業務用電力の冷房空調機の普及拡大による夏期需要の増加により堅調な伸びを示してきている。

 今後の最大需要電力については、蓄熱システムの普及拡大、供給調整契約拡充等の負荷標準化対策により、年負荷率が改善されることから、01年度の1億7499万キロワットから、07年度に1億8180万キロワット、12年度には1億9412万キロワットとなり、01年度から12年度の年平均増加率は0.9%増(気温補正後1.2%増)と電力量の伸びを下回る見込みである。

@年負荷率

 年負荷率については、負荷標準化対策を講じない場合、負荷率の低い業務用電力需要の割合が増加する一方、負荷率の高い産業用需要の割合が減少する等のの需要構造の変化により長期的に低下していく事が予想される。

 これに対し、本供給計画においては、負荷標準化対策として、夏期ピーク時における需要を他の時期・時間帯にシフトすること等を目的とする需給調整(業務用電力を中心とする蓄熱調整契約、産業用の計画調整契約、蓄熱式自動販売機等)の拡大、また、夜間電力を利用した高効率給湯器の普及によるボトムアップ対策等の効果が織り込まれている。

(略)

2 供給力の確保

(1)需給バランス

(略)

@02年度需給実績および03年度需給バランス

 02年度は、全国的に梅雨明けは例年並みとなっており、気温は台風の影響はあったものの、太平洋高気圧がほぼ期間を通じて覆ったため高温で推移したが、最高気温が持続せず、最大電力の記録を更新した地域はなかった。また8月1日に10社合成最大電力が1億7954万キロワット(発電端)を記録した。

 また、需給バランスの基となる最大3日平均電力(1991年、送電端、本概要において「最大需要電力」は「最大3日平均電力」のこと)は10社計で1億7392万キロワットとなり、01年度に比べて0.6%減となった。これに対し、供給力については、北日本を除く渇水や一部計画外停止があったものの、その他の電源設備がおおむね安定して運転されるとともに新規新規の電源が計画通りに運転を開始したことなどから1億9344万キロワットの供給力を確保し、供給予備率は10社計で11.2%であった。

 03年度は、最大需要電力が10社合計で1億7233万キロワットと見込まれるのに対し、供給力としては新設電源等の供給力増加対策を着実に推進すること等により、02年度実績に比べ429万キロワット増の1億9773万キロワットを確保している。その結果、供給予備率は10社計で14.7%となる見込みである。

長期電力需給バランス

長期的にも、今後十年間の電源の開発および供給力の適切な調達により、07年度には2億41万キロワット、12年度には2億1573万キロワットの供給力を確保する計画となっている。その結果、最大需要電力に対して、07年度で10.2%、12年度で11.1%の予備率を有しており、安定供給が確保できる計画となっている。

具体的な供給力としては、現在運転中の2億3347万キロ(03年3月末現在)に加え、建設中の37基2385万キロワットおよび着工準備中の34基3038万キロワットが計画されている。さらに、03年度着手予定として、9地点557万キロワット(水力3万、火力0.5万、原子力553万キロワット)が計画されている。今後とも、将来の電力の安定供給確保の観点から、04年度以降着手が予定されている電源等も含め、電源開発を計画的に遂行する必要がある。

@入札による電源調達

 (略)

(1)電源構成の多様化

 (略)

(1)原子力開発計画

 2012年度までに15基1969万5000キロワットが運転開始し、12年度末において6508万キロワットになると計画されている。また、03度には4基553万キロワットの着手が予定されている。

3 送変電設備の増強

 今後見込まれている電力需要の増加に対応するとともに、供給信頼度の確保等を図るための広域運営の進展にも鑑み、社会環境との調和に配慮しつつ相変電設備についても基幹系統の一層の強化、拡充が図られる計画となっている。

 このうち、送電設備については、大容量送電が可能な超高圧送電線(18.7〜50万V)の整備が重点的に行われる事となっている。また、これに合わせて50万Vの変電設備の整備も進められる計画となっている。

4 広域運営の推進

 電力需給の地域間アンバランスの増大という状況を踏まえ、従来の突発的受給変動リスクへの対応及び経済性確保の観点だけではなく、電気事業者全体による長期供給力の確保という観点から広域電源開発、広域融通等の広域運営を一層強力に推進することが必要である。

 このため、既に記述した電源開発計画及び送変電設備の増強の中でこれらが盛り込まれているところであり、広域電源については、今後10年間に合計で788万キロワットを開発する計画となっている。(表3)

 九電力会社間の広域融通電力(系統運用除く)は。03年度833万キロワット、12年度578万キロワットが計画されている。

 また、広域連係については、今後の電力需給の地域間アンバランスへの対応という観点から計画的かつ着実に推進されることとなっており、今後十年間に表4に示す連携強化策が盛り込まれている。


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