[原子力産業新聞] 2003年4月25日 第2183号 <4面>

[原産年次大会] 藤家原子力委員長講演から−先進サイクルの構築が重要

 日本の原子力の基本政策は、核燃料サイクルの確立である。原子力委員会は、1956年に発足して以来、核燃料サイクル確立の重要性を訴えてきた。当初は資源の有効利用の観点から、最近は環境保全の観点を加えて。しかし、この基本政策は大局観を持ち、将来を見込み、文明の目指すところを考慮し、長い時間掛けて取り組んでいくことを前提に掲げられるものである。

 一方、現実方策は、基本政策の掲げる全体像と長期展望の上に立って、時代の変化、社会の変化さらには技術の進展に従って現実に即して柔軟に捉え、具体的手投を以って変更されるべきものであろう。

 日本の原子力の現状は、いずれも原子力界から出てきた事故や不祥事がきっかけとなって、社会は原子力コミュニティに対する不信の思いで現状を捉え、不安につながっている。

 20世紀後半の軽水炉を中心とした原子力はエネルギー需給構造の改善、自給率の向上、さらには放射性物質の事故による放出漏洩を基本とした安全の上で十分評価されてよいのではなかろうか。また安全の実績が自然に安心につながっていくことを期待したい。

 さて、エネルギーを確保し、環境保全を図る観点に立って考えると、21世紀に求められる原子力エネルギーシステムは、安全最優先のもと、核燃料サイクルが確立されると同時に核拡散抵抗性の高いものでなければならない.すなわち、核拡散の恐れのより少ない原子力システムを構築していかなければならない。言い方を変えれば、プルトニウムが単独で存在しない、プルトニウムが特別の意味を持たないシステムの開発になる。ウラン、プルトニウムおよび他の超ウラン元素が同時に扱えるような先進サイクルの研究開発が求められている。そして、その中心に考えられるのが高速中性子の働きに期待をかける高速炉である。

 最近の世界の原子力界には、このような原子力システムに対する研究開発の動きが見られ、今後の潮流となることが期待される。同時に、国際的連帯が図られることを期待したい。日本は、アメリカやフランス、ロシアと高速炉の研究開発についてこれまで以上の活発な協力をすべく話し合いを持つに至っている。

 原子力開発の特徴は基礎研究や基盤技術研究に加えてシステム合成が求められ、これが実験炉、原型炉などの形で段階的に開発されてきた。基礎基盤の開発は基本的に競争によって新しい概念や技術を生み出すことができる。日本も経済産業省や文部科学省が、公募研究の中で21世紀型の原子力システムヘ向けての研究開発を支援している。高速炉は革新炉としての意義が大きい。


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