[原子力産業新聞] 2003年4月25日 第2183号 <7面>

[GE横河メディカル] 初めて肺の画像化に成功

 医療用画像診断装置メーカーのGE横河メディカルシステム(GEYMS)はこのほど、国立循環器病センター(NCVC)研究所と共同でキセノンガスを応用可能なMR(磁気共鳴断層撮影装置)システムを開発、日本で初めてMRシステムでの肺の画像化に成功した。肺がんの診断において、その大きさや位置情報の特定に力を発揮するCT(コンピュータ断層撮影装置)とは異なり、生体組織の化学的変化や働きを検出できるため、がんが良性か悪性かの判断がより的確に行えると期待されており、肺ガンの精密診断向上に貢献できる。

 MRシステムは、電磁波を体内に照射するため、被曝もない低侵襲での撮影が可能だが、生体組織中の水分や脂質の水素原子の密度を画像化するため、これまで肺のような空洞で密度の低い臓器の撮影は不可能だった。このため、GEYMSとNCVC研究所は、水素原子に代わって無色、無臭で人体にも無害のキセノンガスに着目。このほど、超偏極と呼ばれる状態の希ガス状態にすることでMR感度が最大十万倍に増強されるキセノンガスの体内分布情報を撮影可能なMRシステムを開発した。キセノンガスはまた、化学的にも不活性で代謝を受けないことから、血流量検査にも利用可能。今回開発したMRシステムを使用することで、脳内血流を高精度かつ迅速に画像化することが可能になるため、脳梗塞予防診断にも役立つという。GEYMSでは今後、キセノンMRシステムの商品化に向けた取り組みを強化する。現在、同社MRシステムの上位機種「SIGNA1・5T(テスラ)」シリーズならびに国内初の三テスラの磁場強度をもつ頭部用MRシステム「SIGNA3・0T」に搭載可能なオプション製品として開発中。


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